三嶋の心に「試合で投げられるかもしれない」と光明が差し始めた。ただ一番苦労したのが、ピッチャーとしての生命線であるフォームの修正だ。三嶋は症状と戦っていた昨年の春、左足に力が入らない状態でごまかしながらピッチングをしており、フォームを著しく崩していた。

「投げ始めは固かったし、腕も振れていない感覚がありましたけど、足を真っすぐに踏み出し、力を入れることができましたからね。ただ、フォームに関しては患部に負荷がかからないようにって今でも慎重だし、毎日考えていますね。僕としては戻すというよりも、以前とは別の体だって捉えてやっています。あんまり神経質になりすぎると体って素直だから反応が出ちゃうし、現状においてなにがベストなのか毎日探りながら過ごしていますね」

確信を得た1月上旬の「厚木の自主トレ」

　表舞台へ戻るための逆算の道のり。果たして三嶋が「一軍で投げられる」と、確信を得たのはいつのころなのだろうか。

「1月上旬の厚木の自主トレですね」

　山﨑康晃や石田健大、伊勢大夢といった主力が集う、毎年恒例の厚木トレーニング。自分の力が今どれぐらいのレベルにあるのかを測るにはもってこいの場所だった。

「いいピッチャーが揃っていますし、意見交換も含め、皆いろいろと協力してくれました。僕は手術をしているからまわりより仕上がりは遅かったけど、一緒に走ったりトレーニングをしたり、また彼らのピッチング強度を見るかぎり、これなら行けるんじゃないかって思ったんですよね」

山﨑（中央）と三嶋（一番右）の前で会話をする伊勢　©Nanae Suzuki

三嶋さん、本当に手術したんですか？

　ピッチングを見た気心知れた仲間たちからは「三嶋さん、本当に手術したんですか？」と言われ、まんざらでもなかった。

「そう言わせたいのが一番ですからね（笑）。例年と変わりなく過ごすことができ、本当にありがたいことですよ。まあ、つらかったよなんて話はしたくはないし、それをまわりに言っても仕方がないことですからね。細かい話は、現役が終わるときぐらいに話すことができればなって」

　1月後半にDOCKで三浦監督と会うと、春季キャンプは、若手が中心の奄美からのスタートだと告げられた。その後、主力が集う宜野湾に合流し、オープン戦で投げることになるという。三浦監督からの「それで行けるか？」との問いに、三嶋は「全然行けると思います」と自信をもって頷いた。

　三嶋はオープン戦で7試合を投げ、6イニング、2失点、防御率3.00と及第点のピッチングを披露し、開幕ブルペン入りを果たす。

コンディションですか？　手応えはありましたよ

　初の一軍登板は、開幕2戦目の4月1日の阪神戦（京セラドーム）だった。三嶋は同点の6回にマウンドに上がり、2安打を浴びたが無失点で抑え、ホールドをマークした。

【次ページ】　僕でよければ力になってあげたい