だが、宮崎での事前キャンプから中村に甲斐拓也、大城卓三と3人の捕手と常に行動を共にしてきて、3人のコミュニケーションの深さも知っている。

　そして少し前に中村が、それまで大谷の球を受けてきた甲斐から情報を聞いているところを見ていた。

「やっぱりキャッチャー同士がよくコミュニケーションをとっていたので、サインのこととか、大谷がどういうボールを好むのかとかを中村が甲斐に聞いていたみたいでしたから。キャッチャー同士でも、これはこのままいくなって思ったんでしょうね。まあ、そういう流れになったっていうところですよね」

　村田コーチには中村に大谷のボールを受けさせても「大丈夫だ」という確信はあった。

3人の捕手の当初の起用プランは…

　そもそもこの大会で3人の捕手をどう使い分けていく予定だったのか。

「栗山監督には最初の入り方としては、このピッチャーだから、このキャッチャーというふうに決めませんって言ったんですよ。ただ、客観的に見ていって、こういう風に使いたいっていうのがあれば、その先は臨機応変にやっていきますという話はしていました」

抜群の安定感を見せた中村　©︎Naoya Sanuki

　だから宮崎キャンプからブルペンではできるだけ、それぞれの投手に3人の捕手を順番にあてがうようにしてきた。

「まあそれでもスタートでいくのが（甲斐）拓也か（中村）悠平か。大城は情勢が悪いときっていうか、劣勢なときに、監督が打撃も活かして攻撃に転ずるという感じのときですね。だから1次ラウンドでは拓也と悠平に2試合ずつ（先発を）振り分けました」

　そうして初戦の中国戦は大谷と、第3戦のチェコ戦は佐々木朗希投手と、それぞれ甲斐が。2戦目の韓国戦ではダルビッシュ有投手と、4戦目のオーストラリア戦では山本由伸投手と中村が組んだ。そして準々決勝のイタリア戦では大谷の先発だったので、甲斐が先発マスクを被っている。

大一番を中村悠平に託した理由

　しかしこの間に栗山監督の目に止まったのが、中村のバットだった。韓国戦では安打こそなかったが2つの四球を選んで得点にからみ、オーストラリア戦では2本の二塁打を含む3安打と打撃の好調さが目を引いた。

「それでアメリカに行った後に、監督がちょっと攻撃的なことも考えて打線の中に中村を入れたい、と。そこはもうお任せしますということで準決勝、決勝と悠平に託すことになった訳です」

思案を重ねた栗山監督　©︎Naoya Sanuki

　それでも常に追いかける展開となった準決勝のメキシコ戦では3点を追う5回に1死一、二塁のチャンスで中村の打席を迎えると、迷わず代打に牧秀悟内野手を送り、そこから甲斐、そして最後は大城と第3捕手まで注ぎ込んで勝利を手にした。

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