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「日本に力の差をつけられている」サッカーでも野球でも…韓国が抱く日韓の指導者格差の危機感 韓国はなぜ外国人監督に頼らざるを得ないのか? 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byL) Kiichi Matsumoto/JMPA R) AFLO

posted2023/03/31 17:40

「日本に力の差をつけられている」サッカーでも野球でも…韓国が抱く日韓の指導者格差の危機感 韓国はなぜ外国人監督に頼らざるを得ないのか?<Number Web> photograph by L) Kiichi Matsumoto/JMPA  R) AFLO

サッカー日本代表の森保一監督(左)と韓国代表の新監督クリンスマン(右)

 日本相手に4-13と大敗、オーストラリアにも勝てず敗退を喫したチームについて、現地のベテラン記者からこんな話を聞いた。

「今回のWBCでは、日本と韓国でははっきりと投手の球速に差がありました。私が驚くのは、ダルビッシュ(有)や大谷(翔平)が『日本の野球スタイルではなく、自分の好きな野球をやりたい』と公言していること。またジャイアンツがそれまで『練習量重視』『精神鍛錬』『(指導者への)絶対服従』を否定してきた桑田真澄氏をコーチに起用している点です。世界最高峰のアメリカのスポーツ科学をしっかり学んで革新に成功しました。韓国は保守的なあまり成長に失敗したと見ています」(元大手スポーツ紙デスクで、現韓国野球学会理事のチェ・ミンギュ氏)

韓国球界の指導者は「勉強を全くしなかった」世代?

 その背景には、指導者の体質の違いもある。

 世代的に今の韓国球界の指導者は「野球ばかりして勉強を全くしなかった」時代に育った。「教科書すら読んだことがない」と豪語する世代だ。それゆえ指導法も「俺について来い」「信じていれば成功できる」というようなやり方が多くなる。

 2023年の今、韓国スポーツ界では指導者として脂が乗ってくるであろう55歳前後(森保は54歳)の世代が、「運動ばかりやっていた世代」なのだ。

 2009年以前は、スポーツ選手といえば小学校4年生くらいまでに「運動クラス」「勉強クラス」のどちらに行くかの決断を迫られていた。一旦前者を選ぶと学校の授業にも出席せず、夏休みもなく、延々と部活動を続ける生活を送っていた。小学校時代からの寮生活も当たり前だった。

W杯経験者でトップチームの指導者として活躍する人材は…

 しかし時の大統領、李明博(イ・ミョンバク)がこれを改革。現在では政府の方針によって勉強時間が確保され、成績が良くないと部活の練習にも参加できない制度が採用されている。

 長いスパンをかけての改革だ。サッカー界もまた2023年の現在もその過渡期にある。韓国内でも気づききれなかった「指導者が取り残される時代」が到来しているのだ。じつのところ、1994年アメリカW杯以降のメンバーで後にトップチームの指導者として活躍するのは、ほんのわずかだ。

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