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大谷翔平のインタビュー“あっさりなのに”なぜ深い? 振り返ってわかる“コメントの真意”「本当に打てたとは言えない」「もっとできると思える」 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/03/08 17:06

大谷翔平のインタビュー“あっさりなのに”なぜ深い? 振り返ってわかる“コメントの真意”「本当に打てたとは言えない」「もっとできると思える」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

一見、あっさり回答に聞こえるが実は深い――大谷翔平の言葉が人を惹きつける理由に迫った

 大谷に限ったことではないが、メジャーリーグでの「確信歩き」には賛否両論がある。

 ガッツポーズや雄叫びなど、結果が出たものに対して過剰なアクションを見せることをよしとしない不文律がアメリカにはあり、「確信歩き」も人によっては侮辱行為に思われることもあるそうだ。

 しかし、大谷にはそうした相手を侮辱するような気持ちは毛頭なく、「バッティングのアプローチにおける確認作業の一環」と言えるものだ。

 もっとも、筆者が大谷に「確信歩きの理由」を聞いたわけではない。ただ、こうした過去のインタビューを想起し、選手たちの行動・言動をつなげて考えることで、驚くべき気づきを得られることがある。

淡々とした回答も…隠された思考の深さ

 また同じインタビューでは、次のようにも語っていた。大谷がいかに向上心を高めてきたかがわかる。

「自分の中でできる技術が多くなったら満足なので、それが一番ですね。今までできなかったことができるようになったり、去年できなかったことが今年できるようになっている瞬間が一番うれしいです。ただもっとできると思えることもたくさんあるので、それがもっと出てくれたらうれしいなと思います」

 いつも淡々とインタビューに答える大谷の取材姿勢からは、そのシーンだけを見ると「余計な一言を言わないようにする意識」を感じる。しかし、後になってその言葉の意味に思いを馳せると、彼の思考の深さにハッとさせられることが多い。

野球のレベルって、そうやって上がっていく

 高校時代に取材した際にはこんな言葉も残していた。

「僕が高校生で160キロを目標にしたのはそれを達成することができれば、後にも160キロを目指す選手が現れてくると思ったからです。野球のレベルって、そうやって上がっていくのだと思います。野茂英雄さんがメジャーリーグで成功されて、日本の野球選手の目標レベルが上がりました。日本人はメジャーリーグを目指すようになりました。僕も野茂さんのように世界の舞台で活躍できるような選手になりたいです」

 この言葉のとおり、大谷は高校時代で160キロの目標を達成した。さらには「二刀流」も成功させた今、それに続こうという選手が世界で出現している――。

 言葉から引き出されるアスリートの美学。過去に語っていたことを現在と照らし合わせ、発言の真意がわかる瞬間も、アスリートを追いかける上で至福の時である。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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