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WBCで驚異の打率5割超! 井端弘和が明かす日本を救った一打「いきなり鳥谷が走って、アレって」「WBCに臨む選手に伝えるとしたら…」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/03/08 17:47

WBCで驚異の打率5割超! 井端弘和が明かす日本を救った一打「いきなり鳥谷が走って、アレって」「WBCに臨む選手に伝えるとしたら…」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2013年WBCで打率.556を記録し大会ベストナインにも選出された井端弘和。三連覇をかけた大会での殊勲の一打と痛恨のミスについて語った

「実はあの打席は、初めて長打を打ってやろうと……長打を打てばニ、三塁か、もしくは一塁ランナーが還ってくるんじゃないかという気持ちだったんですね。それで長打を打てるボールを待っていたら、外目に真っ直ぐがきたので、打ちにいっているんです。そうしたらいきなり鳥谷が走ったので慌ててバットを止めた感じでした。その瞬間は何が起きたのか分からなかったですね」

一打同点のチャンスで打席の待ち方に変化が

 走った方も走った方だが、その動きを察知してすぐさまバットを止めて対応した方も対応した方である。しかしこれで2死二塁となった。一打同点へとチャンスが広がり、当然、打席での井端さんの待ち方も変わってくる。

「ヒットでいいな、と。実は違う投手だったんですけど、前の打席で真っ直ぐに見向きもしないで1球も振らずに、初めて投げてきた変化球をヒットしていたんです。そういう伏線があったので、真っ直ぐでくるんだろうなとある程度、(球種を)張れた。3球で1ボール2ストライクと追い込まれて、その間に1球、変化球も見たら、これなら待っていなくてもいけるなと思って、なおさら追い込まれても真っ直ぐ狙いでした」

 マウンドの右腕・陳鴻文が投じたインコース寄りの真っ直ぐ。体を回転させてコンパクトに振り抜いた打球はセンター左に落ちる同点タイムリーとなったのである。

「実はあの試合の前日に内川(聖一外野手)と『やっぱり国際大会は逆方向だよな』という話をしていたんですね」

窮地を救った仕事師・井端の一撃

 井端さんは振り返る。

「内川はその前のWBCに出ていたし、僕もWBCの経験はなかったですけど、アテネ五輪の予選とかで国際大会を経験していた。そういう経験から、国際試合では反対方向のイメージでいった方が、対応がしやすいということで意見が一致したんです。国際大会は相手投手が何を投げてくるか分からないし、引っ張りにいってしまうとサードゴロ、ショートゴロが増える傾向があった。だったらセンターから逆方向でちょっとくらい遅れながらでも、半詰まりくらいでもいいから、そういう狙い方の方が確率が高いなという話をしていたんですね」

 8回の同点の口火を切ったのも井端さんで、その時は内川との話し合い通りに、外めの緩い変化球を右方向に弾き返したものだった。

「9回の打席で打ったのはインコース寄りの球でしたけど、右方向に打ちにいきながらのインコース。だからクルッと回れたというのが、あの結果に繋がったと思いますね。あれをもしグッと引っ張りにいっていて、もしヒットを打っていたとしても、レフト前だったら鳥谷は還ってこられなかったかもしれない。いいところに飛んでくれました」

【次ページ】 WBCに臨む選手に伝えることがあるとしたら…

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