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38歳レブロン・ジェームズが“NBA歴代1位の大記録”に到達できた理由とは? NBA日本人トレーナーが語る「スーパースターの横顔」 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO

posted2023/02/09 11:02

38歳レブロン・ジェームズが“NBA歴代1位の大記録”に到達できた理由とは? NBA日本人トレーナーが語る「スーパースターの横顔」<Number Web> photograph by USA TODAY Sports/Reuters/AFLO

歴代最多得点を更新したレブロン・ジェームズ(38歳)。家族や大観衆に囲まれた中で、偉業を成し遂げた

「準備に関しては、例えばホームゲームのときはルーキーよりも早く、一番にロッカールームに来て準備していました。それは、おそらく僕が在籍していたときに一度も変わらなかったと思う」と中山。

 準備に対して手を抜かない。何年もの間、毎試合、毎日、同じことを続ける。その継続力は通算得点記録達成にはなくてはならないものだった。実際、記録達成の日も、レブロンは試合開始の4時間前に会場に来ていた。

 中山によると、彼が見た範囲ではレブロンが他の選手には受けられないような治療を受けていたり、特別なトレーニングをしていたことはなかったという。ただ唯一、レブロンだけが得ていた特権が、彼の専属スタッフとして働くマンシアスのサポートだったのだ。

「まずはマイク・マンシアスの存在があって、そこに絶対の信頼を置いていたのでぶれないっていうのが一番大きかったと思うんですよね。信頼しているからぶれない、やり方をぶらさないっていうところ。それでいて、新しいことを試す柔軟さもある。

 あっちにひょろひょろって行って、失敗したから戻ってくるとかではなくて、軸はずらさずに常に改善を考え、より新しいものに興味を示すという柔軟性もあったので、そこのバランスがすごくすばらしいなというのは、見ていて思いました。それも、マイクみたいな人がいるからできたことだと思いますし、やっぱりそういう存在がいないと、どこまでが軸なのかっていう見きわめが難しいのかなと思いますね」

「マイクの判断がすごくマッチした」

 マンシアスはトレーナーとして何が優れているのだろうか。中山はキャブスで4年間、マンシアスと同僚として働いた経験から、人間性がすばらしく、レブロンと強固な信頼関係を築いていたことに加えて、トレーナーとしては身体のどこに手をつけるかというセンスが優れていたのではないかと語る。

「レブロン・ジェームズのコンディションはすばらしいんですけれども、人の身体なので、当然、細かい点を見ればいくらでも改善点というのはある。そのどこに手をつけてどこに手をつけないかの判断っていうのはトレーナーの知識と経験、そしてセンスになるんだろうなと、僕は今になってより強く思っているんです。そのマイクのやり方がレブロンの身体に対してフィットしたんだろうなって。

 僕は、トレーナー目線だけで選手の身体を変えてしまうことが必ずしもその選手にいいとは思ってなくて。なので、どこまで身体をありのままに尊重するか、どこに手を加えるかっていうところの、マイクの判断が──もちろん色々と試行錯誤を積み上げたうえだとは思うんですけども、それがすごくマッチしたから今があるのかなって思います」

 その一方で、マンシアスにすべて任せきりというわけでもなかった。

「レブロンには信頼する相棒としてマイクがいるけれども、すごく自立してるところもあって、付き人のようにいつもマイクを必要とするわけでもなかった。自分でできることは自分でというところもありましたね。極端な話、レブロンは(練習や試合後に身体を冷やすための)アイスパッグなんかも自分で作っていました。そんなふうに受身ではないっていうのはすごく感じたところです。

 もしかしたら、それが他の選手と一番違ったところかもしれないですね。たまにレブロンが早く来ることをマイクも知らなかったときもあったり。そこにマイクが必要だったら、もちろん声をかけるでしょうし、そうじゃないときはかけないというような関係。思っていたほどべったりしてないと感じました。お互いが信頼しているからでしょうし。そこはすごくいい関係だなと見ていました」

【次ページ】 「あと数年はできる」新たなモチベーションは?

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