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最高速度275km! 5年目に大幅進化する電動バイクレース最高峰「MotoE」の現在地《日本からは大久保光が参戦》

posted2023/01/26 11:00

 
最高速度275km! 5年目に大幅進化する電動バイクレース最高峰「MotoE」の現在地《日本からは大久保光が参戦》<Number Web> photograph by Ducati

プロトタイプでテストを重ねるドゥカティV21L。エンジンを搭載するマシンとの外観上の大きな違いはマフラーがないことくらい

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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 ロードレース世界選手権(WGP)のサポートレースとして2019年に始まった電動バイクのシリーズ戦「MotoE World Cup」は、今年で5年目を迎える。過去4年間はイタリアのエネルジカ製の電動バイクを使用したが、今年は昨シーズンMotoGPでチャンピオンを獲得したドゥカティが製作する電動バイク「V21L」を使用。シリーズ戦も「MotoE世界選手権」へと格上げされてヨーロッパで全8戦が行われる。

 MotoEはCO2排出量を削減することを目標にスタートしたカテゴリーで、ドゥカティは目標達成に貢献しつつ将来においてもモーターサイクルレースが持つ魅力を維持することを目指し、エネルジカに続いて1社供給メーカーとして手を挙げた。この1月中旬にはグリッドに並ぶ18台とスペアマシン5台の計23台の生産を開始し、初テストが行われる3月までにグランプリを運営するドルナスポーツに引き渡されると発表した。

最高速度275km、車体重量225kg

 ドゥカティがシリーズ戦に提供する「V21L」は、WGPを制したMotoGPマシンのノウハウが生かされた非常にレーシーなもので、エネルジカのMotoEマシンと比べると、格段にパフォーマンスが上がっているように見える。それは見た目だけではなく、MotoEマシンの最大の課題だった車体重量がエネルジカの約260kgから225kgまで軽量化されており、最高速度は275km前後。MotoGPクラスの350kmには到底及ばず、750ccのエンジンを搭載するMoto2クラス(290~300km前後)よりは遅いが、250ccのMoto3(240km前後)よりは速い。

 MotoEの決勝レースは8周で行われる。そのために必要なバッテリーパックの重量はドゥカティの発表では110kg、インバータ5kg、モーター21kgというもので、エネルジカに比べて大幅な軽量化に成功。同時にパフォーマンスも上がっており、レースのレベルが格段にあがるのではないかと言われている。

 現在はグリッド台数を確保するために、主催団体のドルナが各チームにマシンと充電設備を提供。チームは、ライダーとメカニックを雇用、最低限レースに必要なものを準備すればいいという形態を取り、Moto2、MotoGPに参加しているチームが参戦している。ドルナが投資している資金は膨大だが、チームは本来参戦しているレース運営の傍ら、年間5000万円から1億円の予算で参加することが出来る。この数年は参加選手のレベルも上がり、今年はドゥカティがマシンを供給するということで一気に注目が高まった。

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