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「うつです。治療しましょう」元世界60位、テニス・伊藤竜馬34歳が初めて明かす”うつ病と診断されるまで”「トレーニングしないと不安が…」 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byHiromasa Mano

posted2023/01/29 17:01

「うつです。治療しましょう」元世界60位、テニス・伊藤竜馬34歳が初めて明かす”うつ病と診断されるまで”「トレーニングしないと不安が…」<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

今回、ある決意をもって、自身の現状と身に起きていたことを語った伊藤竜馬。2019年、20年と全豪の本戦に出場してきた伊藤から語られたのは…

コロナ禍の中断、妻の本音「これで休める」

 ところが開幕の前日、新型コロナ感染拡大により、大会の中止が決まる。その数日後にはWHOがパンデミックを宣言。ATPツアーそのものも、8月までの中断が決まった。

 その時の想いを美佳さんは、「ちょっと、ほっとしました」と述懐する。

「オーバートレーニング症候群と診断されていたので、休んだ方が良いのではと思っていたんです。でも、オリンピックも迫る中で、周りの選手たちは試合に出てランキングポイントを取りにいく。そんな時に、彼に休む決断ができるかなと疑問にも思っていました。なので不謹慎ではありますが、これで休める、ツアーが中断するのは良いタイミングだと思ったんです」

 こうして2020年の3月からの数カ月間は、情勢に強いられる形でコートを離れることになる。もちろん、家族と過ごす日々は心穏やかでいられた。ただ同時に、「自分の身体の中にエネルギーがない感じで、ずっと過ごしていた」とも振り返る。

試合に出てもどこか強制的に行くみたいな感じで…

 8月にツアーが再開しても、内から燃えるものがない。結局ツアー再開後は2大会だけに出場し、短い2020年シーズンを終えた。

 年が改まっても、心の有り様に大きな変化はなかった。

「試合には出ていたんです。ただ出ても、どこか強制的に行くみたいな感じで、自分から行こうとはあまり思えていなかった。本当にモチベーションが低かったと思います。

 2021年はトータルで15週くらいは海外遠征に行ったんですが、気持ちのアップダウンが激しくて。すごくやる気が出る時もあれば、疲れすぎて、ずっと部屋に閉じこもって寝ていた時期もあったり。結局2021年の10月くらいまでは、そんな状態をくり返していました」

ぼーっとしていることが多かったんです

 妻の美佳さんもこの頃には、夫の状態が単なる疲労ではないと確信する。

「家にいるときも、声を掛けた時の反応が遅かったり、ぼーっとしていることが多かったんです」

 もしかして、うつなのでは——?

【次ページ】 “血液検査でうつを診断する”医師

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