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「通勤電車に乗るのも初めてで…」プロ野球選手→不動産の営業マン、武藤祐太33歳が明かす“引退からの1年”「目標は現役時代より稼ぐこと」 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/12/28 11:03

「通勤電車に乗るのも初めてで…」プロ野球選手→不動産の営業マン、武藤祐太33歳が明かす“引退からの1年”「目標は現役時代より稼ぐこと」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

昨年、戦力外通告を受け、野球界を離れる決断をした武藤祐太。現在、不動産営業の仕事に打ち込む武藤に話を聞いた

7~8社の採用面接を受けた中で、武藤が選んだのは…

 さて、新しい人生。武藤は戦力外通告をされたとき、球団から職員として雇用の誘いを受けなかった。本音を言えば、選手のサポートやスカウト業に興味があったというが、自分がなりたいといってなれるものではない。ここは割り切って前に進むしかなく、幼稚園へ通う娘と生まれたばかりの子どものためにも早く働かなければならない。

 野球に携わる仕事も考えたが、武藤はあえて自分を甘やかすことのできない、新しい世界へ飛び込むことにした。そして人材派遣会社に自分で登録をして面接を受けた。

「面接官から『興味のあるものを教えてください』と言われて考えたんですが、僕はマイホームが欲しいので家の勉強をしたいと思ったんです。また義理の父が建築士ということもあり、不動産関係の仕事をしたいなって」

 武藤は7~8社の採用面接を受けたが、そのなかに横浜市にある㈱みらいアーキテクトという総合建設業の会社があった。面接の際、社長から「引退試合、観にいったよ。絶対に来いよ」と言われたという。これが縁で、武藤はこの会社に就職をした。引退試合から止まっていた時計の針が動き出す。

“プロ野球選手”っていうのは一切捨てようと思っていた

 ノルマが課せられ、日々重圧のかかる営業職。だが元プロ野球選手ゆえのアドバンテージもあった。

「本当、最初は営業なんてできないと思ったんですけど、外回りをしていると、野球好きの人は僕に気づいてくれて契約に至ることもあるんです。会社の人たちからも元プロ野球選手という肩書はインパクトが絶対にあるから自信を持ってもいいよって。営業はまず顔を覚えてもらうのが仕事だからと。ただサラリーマンになるとき、僕としてはプロ野球選手だったっていうのは一切捨てようと思ったんですよ。世間からしたら『だから何なの?』って話で終わってしまう。もちろん尋ねられればお話ししますが、基本的には引き出しにしまっておこうかなって」

 自分を戒めるように武藤は言った。あくまでもひとりの営業マンとしてフラットに勝負したい。とはいえプロ野球時代のクセばかりは、仕事場での日々のルーティンに反映されてしまう。

【次ページ】 出社前のルーティン

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武藤祐太
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