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周囲からは「どうせすぐ潰れるよ」…それでも「引退馬のための牧場」を成功させた異端児が明かす“日本人と馬”への違和感「動物園に馬がいない」

posted2022/12/25 17:05

 
周囲からは「どうせすぐ潰れるよ」…それでも「引退馬のための牧場」を成功させた異端児が明かす“日本人と馬”への違和感「動物園に馬がいない」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

CMなどで一躍有名になったヴェルサイユリゾートファーム。代表の岩崎崇文さんに牧場立ち上げの経緯を聞いた

text by

伊藤秀倫

伊藤秀倫Hidenori Ito

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Kiichi Matsumoto

 世の中には「誰もが目にしていながら実は見えていないこと」を見つけるのが上手い人がいる。

「『動物園に馬がいない』ことに違和感があったんですよね」

 そんな言葉で「日本人と馬との関係」を一言で表現してみせた「Yogibo ヴェルサイユリゾートファーム」代表・岩崎崇文さん(29)もそういうタイプの人なのだろう。

 北海道日高町にあるYogiboヴェルサイユリゾートファームは「引退馬が余生を送れる牧場」というコンセプトで2018年にオープン、支援会員によるマンスリーサポート制度やクラウドファンディングなど従来の枠にとらわれない斬新な経営で急成長を遂げた。今年5月ツイッターに投稿されて大きな反響を呼んだ〈牧場で馬(同ファーム繋養馬のアドマイヤジャパン)がYogiboに寝そべる動画〉の牧場といえば、「ああ」と思い当たる人も多いだろう。

 周囲の関係者からは「絶対に失敗する」と陰口を叩かれていた「引退馬ビジネス」を成功に導いた秘訣とはいったい何だったのだろうか(全2回のうち第1回/続きは#2へ)。

内定を辞退して牧場経営の道へ

 崇文さんがこの世界へ飛び込んだのは、母・美由紀さんの再婚相手で義理の父にあたる小川義勝さんが2015年に病気で亡くなったことがきっかけだった。日高に創業30年近くの三城牧場を所有していた義勝さんは死に際して、美由紀さんと崇文さんに「できれば、牧場を継いでほしい」という言葉を遺したのである。実は崇文さん自身、小学生の頃から乗馬に取り組み国体に出場するほどの腕前だったこともあり、以前から馬に関わる仕事に興味はあったというが、この時点では大学卒業後、就職することが決まっていた。

「車が好きだったんで自動車関係の会社に行くはずでした。母も最初、『せっかく希望のところに就職できたんだし、牧場は借金もたくさんあって、いつ潰れるかもわからないから』と僕が牧場を一緒にやることには反対していました。ただ、昔から馬が好きだったので、どこまでやれるかわからないけど牧場の仕事をやってみたいという気持ちがだんだん出てきて、結局内定を辞退したんです。正直東京の人の多さにウンザリしていたこともあって、北海道いいじゃん、という部分もありました。まあ観光で来るのと実際に住むのとでは大違いだったわけですが(苦笑)」

【次ページ】 乗馬クラブと牧場で異なる「馬との関係性」

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