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「同年代の選手とプレーすることは恥ずかしいこと」“アーセナル冨安健洋先生”の白熱教室…アビスパ後輩の疑問に答え続けた3日間 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/11/23 11:24

「同年代の選手とプレーすることは恥ずかしいこと」“アーセナル冨安健洋先生”の白熱教室…アビスパ後輩の疑問に答え続けた3日間<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

カタールW杯、日本代表ディフェンス陣のキーパーソンとなる冨安健洋。彼は古巣に自らの経験を還元していた

 冨安の意向を受けて、マネージメント事務所のUDNが動き始めたのが2021年の12月のこと。そこからアビスパの関係者との交渉が始まり、開催が決まってからは冨安も参加。ZOOMなどのオンラインツール、ときには電話も交えながら、練習のコンセプトからメニューまで作成していった。

僕は毎回の練習が勝負だと思っていますよ

 冨安がこだわった部分が、指導対象となる選手、そしてプログラムだった。

「別の世代の子どもたちを順番に教えるのではなくて、3日間、同じ年代の選手たちを指導させてほしいんです」

 そう考えた理由と想いをスタッフにこう伝えたという。

「そもそも3日間で一気に上達することは現実的ではないです。でも、みんなが意識を変えるきっかけにしてもらいたんです。だからこそ、僕が伝えたいことをどれだけ感じ取ってもらえるか。僕は毎回の練習が勝負だと思っていますよ」

 この言葉に帯びる熱からも、オンラインミーティングでの積極的な発言からも、冨安が本気で取り組んでいるということは、かかわっている者すべてが感じていた。

 ただ、提案を受けたアビスパのアカデミーのスタッフたちは、冨安が「なぜ、このタイミングで」指導をしたいと考えてくれたのか、不思議に感じていたという。ただ、それも冨安の言葉に耳を傾けていくことで明らかになった。

「アーセナルに来て、アルテタ監督と出会って、本当に色々なことを学べました。これが『現代サッカーの最先端で、世界のスタンダード』なのかと日々の練習からも実感しています。

 でも、僕が引退する10年後や20年後に、アーセナルで学んできたことを伝えようとしても、そのときには時代遅れの理論になっているかもしれない。だからこそ、“今”、若い選手たちに伝えたいんです」

冨安への“練習後質問”が1時間近く続いた

 ミケル・アルテタ(40)が監督に就任してからアーセナルは右肩上がりの成長を続け、今シーズンも首位をひた走っている。そんな若き知将が指導するチームで、プレーする者にしかわからない興奮と学びを伝えたい。そんな想いが内側からあふれて出ているのが、言葉の端々からうかがいしれる。

 だから、このプロジェクトにかかわった、サッカーを愛する全ての人たちはみな同じことを考えた。

「実現までのハードルがいくつあったとしても、必ず乗り越えていくぞ」

 こうして「冨安キャンプ」は実現したわけだが、誰もが一様に「実現できて良かった」と感じているという。

 そう感じた理由はいくつもある。

【次ページ】 冨安キャンプが終わったあとに起きた化学反応とは

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