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「決してガードを下げてはいけない」ラグビー日本代表はオールブラックスに付け込む隙はある? ジェイミー・ジョセフが語る“4年ぶりの決戦” 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/10/28 06:01

「決してガードを下げてはいけない」ラグビー日本代表はオールブラックスに付け込む隙はある? ジェイミー・ジョセフが語る“4年ぶりの決戦”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

母国であるニュージーランドとの決戦を前に、意気込みを語ったラグビー日本代表HCジェイミー・ジョセフ

 ジェイミーは4年前の2018年11月3日、味の素スタジアムでオールブラックスを迎えた。スコアは31対69の敗戦。当時は1年後に日本全土が「ワンチーム」に熱狂するとは想像できなかった。

「あの時も倒したかった。勝ちたかった。でも、よくよく考えてみると、それはかつて私がオールブラックスのメンバーで、オールブラックスがどういうチームか肌身で知るからこそ、生まれた感情だったかもしれません。あの試合で30点を取ったのは評価できます。ただし、オールブラックスを倒すためには、チームがまとまり、決してガードを下げてはいけない。接戦に持ち込み、相手のスキルにプレッシャーをかける必要があります。オールブラックスが自由にプレーしだしたら、それを止めるのはどのチームにとっても難しいことです」

 W杯を来年に控え、今年の夏にはウルグアイ、フランスと戦い、日本は着実な成長を見せたが、チームを預かるジェイミーが課題として挙げたのは「一貫性」だった。

「去年のオータムテストが終わって、リーグワンが開幕し、6カ月間、代表の強化は中断しました。ようやく集まって2週間合宿をして、ウルグアイ、フランスと戦い、そこから2カ月オフがあって、また2週間練習して、10月、11月で6試合を戦う。選手が戻ってきたと思ったら、またいなくなる。その繰り返し。まるでパートタイムの父親のような気分でした(笑)。前回大会を迎える前はサンウルブズもあって、シーズンを通してチームをマネジメントできましたが、来年のW杯に向けて強化の一貫性を保つことが難しいと実感しています」

齋藤直人と李承信の台頭は明るい材料

 強化の課題を抱えるなかでも、若手の台頭は明るい材料と言える。SHの齋藤直人は25歳、SO李承信(リ・スンシン)は21歳。いずれも7月のフランス戦で実力を証明した。

 齋藤は、日本の「伝統芸」とも呼ぶべき素早い球出しから、アタックのリズムを演出する役割を担っている。

「齋藤の特徴は、速さと早さです。プレースピードは速く、何をしなければならないか理解している。賢いんです。しかも学びが早い。流大も同じように賢い選手ですから、SHにこのようなタイプの選手が複数いるのは、我々にとって幸運なことです」

 SOに入った李は、コロナや負傷により離脱者が出たことでチャンスをつかんだ。

「李にはポテンシャルを感じていました。神戸でのプレーも見ていましたが、彼をコーチングしたことがなかったので、合宿に呼び、彼のプレーや、その人となりを見てみたかったのです。まず、李は練習態度で仲間の信頼を勝ち得ました。そしてテストマッチでもタフであることを証明しました。特にタックルした後のリロード、立ち上がりがものすごく速い。彼は自分の力を証明しましたし、成長の余地が大きい」

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