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長谷部の充血した瞳、ビッグマウス本田の横顔、聖地ブラジルで日本代表の「魔法がとけた日」 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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posted2022/11/07 11:00

長谷部の充血した瞳、ビッグマウス本田の横顔、聖地ブラジルで日本代表の「魔法がとけた日」<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

ブラジルW杯でキャプテンとしてチームを鼓舞し続けながらも1分2敗のグループ最下位に終わり、目に涙を浮かべる長谷部

 日本代表をめぐる冒険が終わると、僕にとって4度目のW杯は良い意味でも悪い意味でもただの気楽なサッカーのお祭りになった。

 バスとタクシーと飛行機を乗り継いで、ベロオリゾンチでのブラジル対チリ戦を撮り、ブラジリアでのフランス対ナイジェリア戦を撮り、夜のバスターミナルのテレビでドイツがアルジェリアに危うく追いつかれそうになるところを見て、翌日はアルゼンチンとスイスの試合をサンパウロで撮った。試合のない日は街や海辺に出かけ、シュラスコを食べ、水着姿の女の子を眺め、ジョギングをし、砂の上でボールを追いかける男の子たちを撮った。

 あの巨大なマラカナンが6万人だか7万人だか収容のただのスタジアムになっていたとか、ネイマールを怪我で欠いたブラジルが準決勝でドイツ相手に1−7で惨殺されるとか、スタンドでの鳴り物の演奏は一切禁止とか、およそブラジルらしくない出来事はいくつかあったけれど、まあそれでもやっぱり、ブラジルはブラジルだった。日本にいては到底感じられないようなサッカーの匂いがいつも身の回りに漂っていて、ああ自分はサッカーが好きなんだなあ、ということを毎日再認識させてくれた。

いつもそこにいるドイツ

 2014年7月13日、僕にとって4度目のW杯はアルゼンチン対ドイツの決勝戦で終了する。

 面白いことに、僕が現地で直接見ることのできた4回のワールドカップのうち、なんと決勝カードは3回もアルゼンチン対ドイツだった。1度目はメキシコシティのアステカで、2度目はローマのオリンピコで、そして3度目はリオデジャネイロのマラカナンで(さらに付け加えると、横浜での決勝はブラジル対ドイツである。ドイツおそるべし!)。

 試合は90分が終わって0−0、延長後半にゲッツェという若いFWが決めた1点をドイツが守り切り、西ドイツ時代も含めると4度目の優勝を果たした。白いレプリカに身を包んでスタンドを埋めたドイツサポーターは大いに盛り上がったものの、試合後の表彰式で僕が追いかけていたのは敗れたアルゼンチンのエース、リオネル・メッシの姿だった。勝って喜ぶ選手たちの写真も悪くないが、写真の醍醐味は負けても絵になる選手を撮るところにある。

 今改めて8年前に撮った写真を眺め直してみると、たまごカステラが600円になったのはあいかわらず納得できないけれど、やっぱりブラジルのW杯は行って良かったなと思うし、今回のカタールも行くべきだったかな、と少し後悔している。

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