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「大阪桐蔭はじめ甲子園組は別世界の人」「私学とも戦える戦力に」府内屈指の超進学校も興味を示す“スーパー大連合チーム構想”とは
 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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photograph byHirakata Nagisa HighSchool

posted2022/10/03 11:01

「大阪桐蔭はじめ甲子園組は別世界の人」「私学とも戦える戦力に」府内屈指の超進学校も興味を示す“スーパー大連合チーム構想”とは<Number Web> photograph by Hirakata Nagisa HighSchool

大阪府内の公立校では、枚方なぎさ高校など多くの高校が集まって合同練習をしている

 その後箕面東高校に転任して4年目の夏、監督に就任した。ラグビーのエディー・ジャパンの『JAPAN WAY』にならって、『MINOH EAST WAY』と名付け、学校の枠を超えた独自の部活動運営にチャレンジした。公立の少ない部費内でトレーナー、管理栄養士と連携、生徒の技術を数値化し、SNSも活用するなどしていた。

 2020年、大阪マラソン組織委員会事務局に出向、運営に携わる経験を積んだのち、22年3月に大阪府を退職。 共同で新たに会社(FPC)を立ち上げた。FPCは『BUKATOOL(ブカツール)』 という部活動支援のためのデジタルテクノロジーを開発し、教育現場で実証実験を行っている。

府内有数の超進学校のリアルな練習環境とは

 その藤田と縁があるのが、大手前高校野球部監督の白木原舜(32歳)教諭である。彼の口からも“普通の公立校”の現実を聞かせてもらった。

 神戸大野球部の後輩である白木原は新任教師としてまず伯太高校に赴任し、ソフトボール部の顧問になった。そこでは『BUKATOOL』の運用に協力していた。そしてこの春、大手前に転任して、秋の新チームから監督に就いた。

 大手前は1886年開校の伝統校である。大阪城の堀と接し、周囲には官庁、企業が点在する大阪市の“一丁目一番地”に位置する。学区撤廃などの経緯はあったが——今も府内有数の超進学校である。市内の真ん中で通学しやすく、1学年9クラス、360人で全校生徒が1080人という大規模高校だ。

 放課後の部活は15時45分頃から始まる。定時制があるので17時50分には完全下校になる。アップや整備もあるので練習時間は正味1時間30分程度と時間が足りないため、朝練は必須になるという。

連係練習はできず、3年生になると受験重視

 法務局など高層ビル群がグラウンドを囲む中で——白木原は練習環境についてこう明かしてくれた。

「フリーバッティングはできないです。金網じゃなくて普通のネットなので突き破ったら、えらいことになりますから。バッティングは朝練かたまにゲージ内か……。軟式野球部がいない時にロングティーをします。

 内野ノックはできますが、グラウンドの作りが外野方向にしぼんでいます。レフト側は60メートルちょっとなので外野ノックは斜めに打ちます。総合的な連係練習はできませんね」

 さらにサッカー、ラグビーなどの他クラブの日と交互にグラウンドを使う状況だ。

 取材日は室内で器具を使ったウェート組と、屋外の空きスペースでのフィジカル組に分かれたトレーニング日だった。野球部は2年が11人、1年が4人(3年生は7人)で、「15人はめちゃ少ないです。1年生の4人は聞くところ、過去最低」という状況である。

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