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『ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝』「他者の問題に無関心ではいけない」自伝に宿るラピノーのエネルギー。 

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高島鈴

高島鈴Rin Takashima

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posted2022/09/22 07:00

『ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝』「他者の問題に無関心ではいけない」自伝に宿るラピノーのエネルギー。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝』ミーガン・ラピノー著 栗木さつき訳 海と月社 1760円

 ミーガン・ラピノーはサッカー選手である――だがその一単語でラピノーの一つの人生を語り切ることは当然できない。ラピノーは一流アスリート、アメリカ代表選手、オープンリーレズビアン、反差別のアクティビストであり、それらの問題に悩みながら立ち向かう一人の人間だ。『ONE LIFE』はそんなラピノーの半生をリズミカルに語る、極めて親しみやすい評伝である。

 特に胸を打たれるのは、ラピノーがアクティビストとしての自分に目覚めていく過程だ。ラピノーは2012年にカミングアウトに踏み切る。当初はカミングアウトしない他の選手にやきもきしていたラピノーだが、次第に自分は恵まれた立場にあり、「言える」ことが一つの特権だと知った。そして他者のために行動する意義を意識したとき、その政治的関心はLGBTQの問題に限らず、女性差別・黒人を筆頭とする人種差別の撤廃、監獄の廃止など、力強く広がっていった。〈ある大義のために活動を起こしても、ほかの問題について無関心では意味がない〉(200頁)。そう言い切るラピノーの姿勢には、極めてまぶしい希望を覚える。

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