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「え、こんなに…」高校2年生・馬場咲希がとまどった“チャンピオンのオシゴト”とは? ゴルフ界37年ぶり快挙の初々しいウラ話 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2022/09/15 11:03

「え、こんなに…」高校2年生・馬場咲希がとまどった“チャンピオンのオシゴト”とは? ゴルフ界37年ぶり快挙の初々しいウラ話<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

全米女子アマを制した馬場咲希(17歳)。16日から始まる「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」に出場する

 そもそも、その年の女子アマチュアゴルファー・ナンバーワンを決める全米女子アマチュア選手権は、彼女にとっては当初、大きな目的のためのひとつの手段に過ぎなかった。

 今年の4月25日。17歳の誕生日に千葉で行われた日本地区最終予選会に参加した馬場は、6月のメジャー・全米女子オープンへの切符を手にした。プロ・アマ合わせて158人が出場した戦いを勝ち抜いた6人のうちの1人になった。

 世界ランキング1位の経験もある米国のネリー・コルダが憧れ。6月、ノースカロライナ州パインニードルズでの本戦で対面できたのも幸運だった。コルダは今年3月、鎖骨下静脈に血栓が見つかり、手術と治療のため4カ月にわたって戦列を離れ、復帰戦がちょうどこの全米女子オープンだったのだから。

 ただし馬場は夢見心地で多くのトッププロと記念撮影に収まるだけでは終わらなかった。日本人アマチュアとして8年ぶりに予選を通過し、3日目は日本勢でただ一人アンダーパーをマークする快進撃ぶり。最終日の後半に崩れ78をたたいたことも、いっそう闘志に火をつけるきっかけになった。

馬場にとって魅力的だった“副賞”

「全米女子オープンに出られて本当に楽しかった。来年の会場はペブルビーチ(ゴルフリンクス/カリフォルニア州)。プレーしてみたい!」

 もちろん、来年同じように日本での予選会を通過してペブルビーチにたどり着く手もある。前例で言えば、アマチュア選手としてはそのルートが現実的。だが馬場は、たとえ“非現実的”だとしても目の前に舞い降りたチャンスをみすみす逃そうとはしなかった。

 全米女子オープンでの予選通過により、7月の全米女子ジュニア、そして8月の全米女子アマチュアの出場権をゲットした。18歳以下で行われる全米女子ジュニアで予選ラウンドを首位通過。トーナメント形式の決勝マッチプレーの2回戦で敗れたが、「本格的なマッチプレーは(キャリアで)初めてだったんです」と、短い期間で戦い方を吸収した。

 そして迎えた全米女子アマチュアは、各国の大学生も参戦するまさに最高峰のゲーム。1985年、服部道子の優勝が日本勢の金字塔だった。ただし、馬場の眼にはタイトルそのもの以上に“副賞”が魅力的に映った。「去年の結果や、優勝したら何がもらえるかを調べてきました。優勝者は全米と全英に出られると聞いていた」。そのターゲットに向かって猛然とバーディを重ね、圧倒的な強さをもってトーナメントを勝ち抜いた。

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馬場咲希
ネリー・コルダ

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