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近江・山田陽翔や大阪桐蔭以上に「仙台育英5人継投」「下関国際の先発→救援」が機能… “勝利の方程式”が高校野球でも必須に? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/09/01 06:00

 近江・山田陽翔や大阪桐蔭以上に「仙台育英5人継投」「下関国際の先発→救援」が機能… “勝利の方程式”が高校野球でも必須に?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

近江・山田陽翔や強力投手陣の大阪桐蔭ではなく、仙台育英が夏制覇を成し遂げた要因とは?

 2022年は2019年の星稜・奥川(現ヤクルト)のような抜群のパフォーマンスの投手はいなかったが、近江の山田陽翔が2年連続で最多投球数をマークした。

 山田は2021年は5試合すべてで先発した。ただし完投はなく先輩の岩佐直哉(右)、同級生の副島良太(左)の救援を仰いでいた。近江だけでなく、2021年の出場校は「投手に無理をさせない」起用法を考えた学校が多かったようで、500球を投げた投手はいなかった。

近江・山田と仙台育英投手陣の対照的な部分とは

 3年になった山田は、今季も1回戦から準決勝まですべてで先発、完投は1試合だけで、4試合で3年星野世那(左)の救援を仰いだが、昨年以上に絶対的なエースだったのは間違いない。奪三振は51個にもなった。644球は2018年の吉田輝星以来、最多だ。

 しかし、山田の防御率は3.55と高校野球としては芳しくない。P/IPが16.95と15を大きく上回っていることからもわかるように、山田は登板した5試合すべてで失点し、準々決勝・高松商戦、準決勝・下関国際戦で合わせて10失点と打ち込まれた。山田の負担が大きくなっても、次に続く投手はいなかった。その結果として勝ち抜くことができなかったのだ。

 対照的だったのが優勝した仙台育英だ。

213球 斎藤 蓉(左)(4試14.2回12三 率1.22)P/IP14.52
188球 高橋煌稀(右)(4試12回 8三 率0.75)P/IP15.67
124球 古川 翼(左)(3試8.2回 11三 率3.12)P/IP14.31
122球 湯田統真(右)(3試5.2回 6三 率6.35)P/IP21.53 
81球  仁田陽翔(左)(2試4回 3三 率0.00)P/IP20.25 

 タイプが違う投手を5人擁し、1人の投手に負担をかけることなく5試合を戦い抜いた。エース格とみられた左腕・斎藤は7月上旬に肘を故障して地方大会は不出場。甲子園では当初は救援だったが、準々決勝、決勝と先発して自責点1の好投を見せた。

 高橋は県大会では斎藤に代わって4試合に先発し無四球、甲子園でも2度先発して自責点1と安定感があった。

 左腕・古川は春は先発だったが、夏は救援に特化して活躍。左腕の仁田も救援で好投した。これに3回戦で先発したが、あとは救援に回った湯田の5人の分業で優勝した。

 須江航監督は、初戦の鳥取商戦に5投手を登板させた。全員が140km/h以上の球速を記録して話題となったが、3回戦も4投手が登板と、投手リレーで戦う戦法を明確にしていた。特に救援を重視していたように思う。

 高橋、湯田、仁田は2年生だから、来季も期待が持てる。

下関国際は「先発→救援」で勝利の方程式を確立した

 準優勝の下関国際は「先発→救援」の「勝利の方程式」を確立した。

【次ページ】 強力な大阪桐蔭でも“勝利の方程式”になり切れなかった

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