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藤井聡太“10代で9期連続栄冠”は大記録 「人生を変えてくれた一人が藤井さん」盟友・永瀬拓矢相手の棋聖防衛…流れを変えた妙手とは

posted2022/07/22 11:04

 
藤井聡太“10代で9期連続栄冠”は大記録 「人生を変えてくれた一人が藤井さん」盟友・永瀬拓矢相手の棋聖防衛…流れを変えた妙手とは<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

藤井聡太と永瀬拓矢の棋聖戦は見どころが多かった

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は、藤井聡太棋聖(20=竜王、王位、叡王、王将を含めて五冠)に永瀬拓矢王座(29)が挑戦した。藤井は7月17日に行われた第4局に勝って3勝1敗とし、棋聖3連覇を達成した。2年前に初タイトルの棋聖を獲得して以来、タイトル戦で奪取と防衛を重ねて9期連続の栄冠はすごい記録だ。藤井−永瀬の棋聖戦の勝負、両者の関係について、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】

 藤井棋聖に永瀬王座が挑戦した棋聖戦は、タイトル保持者が激突したビックマッチだが、研究パートナー同士の対戦でもあった。

 藤井が14歳で棋士デビューしてまもない2017年の春。ABEMA TVは、藤井四段が一流棋士や若手精鋭と対戦する「炎の七番勝負」を企画した。そして、藤井は羽生善治三冠、佐藤康光九段、斎藤慎太郎六段らを破り、6勝1敗と大きく勝ち越した。藤井に勝った唯一の棋士が永瀬六段だった。

 永瀬は、藤井が将棋に打ち込む真摯な姿勢と妥協のない指し方に好感を抱き、後日に練習将棋を申し込んだ。

 永瀬は2016年の棋聖戦で羽生棋聖に挑戦し、2勝1敗と勝ち越したが、2連敗して初タイトルを逃した。あと一押しの実力を伸ばす起爆剤として、藤井との申し合いが必要だと思ったという。

 そこで永瀬は藤井の地元の愛知県に出向き、藤井の師匠の杉本昌隆八段の研究室で、藤井と本番さながらの力のこもった練習将棋(持ち時間は各30分)を重ねた。1局目は10時から始め、2局目は20時まで続けた。局後の検討を含めて4時間かかる将棋もあり、永瀬が最終の新幹線で帰京することがあった。

師匠の杉本八段も「2人は同志のような関係です」

 両者の申し合いは、これまでに100局を超えているという。夏休みの時期には藤井が東京に行き、都内の将棋クラブの一室で指すこともあった。コロナ渦の状況になってからは、オンラインで指している。

 永瀬は「藤井さんと将棋を指し続けたことで棋力が上がり、タイトルを獲得できました(2019年に叡王と王座の二冠を取得)。自分の人生を変えてくれた一人が藤井さん」と、敬意を込めて語った。

 藤井の師匠の杉本は「藤井のレベルについてこれて、盤上で激しいラリーを続けられる数少ない棋士が永瀬さん。同志のような関係です」と、両者について語った。

 棋聖戦第1局は6月3日に兵庫県洲本市で行われた。藤井棋聖と永瀬王座は、戦前のインタビューで次のように語った。

 藤井「研究会でお世話になってきた永瀬さんと、大きな舞台で戦えるのは楽しみです。お互いに棋風を知っていて、さらなる工夫が必要だと思います」

 永瀬「藤井さんとの対局は、かけがえのないものです。お互いに手の内を熟知し合っていると思います」

第1局、2回の千日手が異例だった理由

 両者の開幕時点の対戦成績は、藤井の7勝3敗。ただ直近は永瀬が2連勝している。

【次ページ】 難解な最終盤の局面で、藤井が見せた妙手

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