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平本蓮のRIZIN初勝利で見えた“MMA2連敗からの変化”とは? KOは逃しても「これが最終形態ではない」と断言できる理由 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2022/07/04 17:03

平本蓮のRIZIN初勝利で見えた“MMA2連敗からの変化”とは? KOは逃しても「これが最終形態ではない」と断言できる理由<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

RIZIN36のメインイベントで鈴木博昭に判定勝ちを収めた平本蓮

 完全に上機嫌なのだった。リング上では鈴木に向け「アマチュア修斗からやり直したほうがいいよ」。これは完敗に終わった自身のMMAデビュー戦で萩原京平に言われた言葉だ。勝って絶対に言ってやると決めていた。鈴木にはとばっちりでしかなかったけれども。

 初勝利を挙げ、次の目標として掲げたのは萩原へのリベンジだ。

「チンピラ萩原をぶっ飛ばしたい」

 鈴木戦決定の記者会見では「生まれ変わりました。もう人の悪口は言いません」とコメントしていたが、それも勝つまでの期間限定だったか。

 平本としては、練習してきた“勝ち筋”を貫いての勝利だった。「一つの形としてできあがったのかなと思います」。戦前から「打撃だけでいきます」と言っていた通りでもあった。パンチがたまたま当たってKOしたといった“不思議の勝ち”ではなかった。だから嬉しかったのだ。端的に言えば、努力の成果としての勝利だった。

過去2連敗からの変化とは?

 試合で大事にしたのは「修正、リセット」だ。攻防の中で距離が近くなってくると、鈴木の打撃もタックルも決まりやすくなる。そこで冷静に、丁寧に距離を戻す。組み技に関してはディフェンスのみ。相手に攻めさせず自分だけが打撃で攻める。

「焦らず自分の距離を徹底して守って。色気を出さずに自分のテリトリーで試合をする。完全制圧しようと」

 逆に鈴木は、テイクダウンしてグラウンドのパンチでKOすることを狙っていたそうだ。立ち技出身のファイター同士が「そのまま“立ち”でやったらキックボクシングと変わらないので。結果そうなってしまいましたけど」。

 スタンドもグラウンドも、打撃も組み技も「全部混ぜてこそのMMA」と鈴木。平本はそんな理想をひとまず置いて、勝つ確率が上がる要素以外を削ぎ落とした。

 デビュー戦はグラウンドに持ち込まれ、メッタ打ちにあった。2戦目の相手は同じストライカーの鈴木千裕。「MMAをやる」と自分からタックルを仕掛けるつもりだったが、試合が始まると「打ち気になってしまった」。結果、打撃を食らいテイクダウンを許してしまう。

 テイクダウンディフェンスの向上は必須。そこに自信もあった。「次はレスラー(レスリングベースの選手)とやってもいい」と言うほど。加えて重視したのは落ち着いて試合を進め、ミスをしないことだ。

 今回はデビュー2連敗の課題をクリアする勝利でもあったわけだ。KOのチャンスも狙っていたが、そこは鈴木の守りも固く、タフだったと素直に認めていた。

【次ページ】 「判定勝ちでは物足りない」というファンの感情は…

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