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千代の富士相手には「首折れて死んでもいい」「もう強くて、ずっと強かった」 小錦、大乃国… 名力士は“大横綱”にどう挑んだか 

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posted2022/05/22 11:02

千代の富士相手には「首折れて死んでもいい」「もう強くて、ずっと強かった」 小錦、大乃国… 名力士は“大横綱”にどう挑んだか<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

圧倒的な強さを誇った千代の富士

体が浮いてたんだよね、どうなってんだ

<名言2>
サッと前ミツ引かれて体が浮いてたんだよね。どうなってんだ、と思った。
(琴風豪規/Number271号 1991年7月5日発売)

◇解説◇
 2022年の3月場所限りで停年となった琴風は、幕内最高優勝2回に計6回の三賞受賞、大関時代には212勝110敗(8休)と安定感のある戦いぶりで70~80年代の角界を盛り上げた。同時期に登り竜のように駆け上がっていったのが千代の富士だった。

 琴風が強烈に印象に残っていると語った一番が、1980年の九州場所5日目だった。ここまで千代の富士は琴風戦で5戦全敗。しかし肉体改造に励み、相撲のスタイルを変貌させた千代の富士について「この一番は、それまでとは全く違う衝撃だった」と語る。

 千代の富士が鋭い踏み込みから左前まわしを取ると、琴風は出足を止められ、何もできないまま寄り切られた。

「全然前と相撲が変わってきた」

「これまで負けたことなかったのに……」

 素早く前ミツを取って一気に前に出る相撲に、“腰が重い”と評された琴風がまったくかなわなかったのだから、ショックを受けて当然だろう。

 千代の富士との通算対戦成績は6勝22敗。数字は千代の富士の凄みを物語る。

連勝記録を止めた大乃国の言葉

<名言3>
ザブトンが飛んだのも知っているけど……そんなこと気にしていられないし、関係ないね。
(大乃国康/Number271号 1991年7月5日発売)

◇解説◇
 もし「千代の富士の全盛期は?」と問われた際、その時代を知るファンならそれぞれ思い浮かぶ場面があるに違いない。

 ただ数字という面で見れば1988年5月場所から88年11月場所にかけて記録した「53連勝」だろう。これを上回るのは双葉山(69連勝)、白鵬(63連勝)だけという大記録である。

 その連勝記録を止めたのは昭和最後の取組となった、九州場所千秋楽の大乃国戦だった。87年に横綱昇進した大乃国だったが、先場所では8勝にとどまり、今場所でもすでに4敗を喫するなど、厳しい声が飛んでいた。さらには横綱昇進後に千代の富士に勝った経験がないということで、千代の富士優勢の声は大きかった。

「自分自身、成績あがってなかったんで、今日は何が何でも勝ちたいという気持ちはあったけどね」

全くうれしくないといえばウソになるけど

 この一番で大乃国は立ち合い鋭く踏み込むと得意の左上手を取って、千代の富士に上手を与えない最高の形に。最後は土俵際で身体を預けての寄り倒しで勝ち切った。すると館内は悲鳴のような歓声があがり、ザブトンも乱れ飛んだという。この勝利について、大乃国は後にこう振り返っている。

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