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「大谷翔平はアメリカをエンジョイしていますね」「イチロー、格好よかったじゃないですか」元NHK解説者・ 池井優名誉教授(87歳)が語るMLB日本人史 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki/Wataru Sato

posted2022/04/10 11:03

「大谷翔平はアメリカをエンジョイしていますね」「イチロー、格好よかったじゃないですか」元NHK解説者・ 池井優名誉教授(87歳)が語るMLB日本人史<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/Wataru Sato

大谷翔平の大活躍について、長年のMLB愛好家である池井優名誉教授(87歳)も嬉しそうに語っていた

池井:そして――彼はアメリカ野球をエンジョイしています。通訳の水原一平さんのサポートが素晴らしいんでしょうが、野球少年がそのまま大きくなったみたいな。毎日が楽しくてしょうがないという感じですね。それと監督との出会いもよかったですよね。日本の時は栗山英樹監督でしたし、現在はマドン監督です。二刀流をそのままに、いいところを伸ばしてどんどん使ってやろうじゃないかと。

 それに、エンゼルスというチームもよかった。ヤンキースやドジャースだとメディアの目もきついけれども、カリフォルニアという気候もいいですしね。あらゆることがもう大谷にプラスになっているのでしょう。後は怪我が気がかりですね。特にスライディングした時に、野手に引っかけられないかと心配しています。

日本も野球史、かつての名選手を大切にしてほしい

 大谷について嬉しそうに語った池井氏。メジャーリーグ、そして野球そのものを楽しむには、どんなことが大事だと思っているのだろうか。

池井:僕は向こうの野球で羨ましいなと思うのは、かつての名選手がよく球場に来ることですね。球場でも「誰々選手がおいでです」とアナウンスする。するとみんなスタンディングで手を振ってね。

 ヤンキースやドジャースみたいな、伝統のある球団は、オールドタイマーズデイといって、昔の名選手が来て、ユニフォームを着て場内を1周する。お腹が出ちゃったり髪の毛が1本もなくなっちゃった人もいるんだけれども。それでもお客はみんな大喜び。

 でも日本でやろうとしても……ですよね、球団の親会社が変化しているという影響もあるのでしょうけども。先日、九州に行って飛び上がるほど驚いたのは、「王(貞治)さんって昔、巨人の選手だったんですね」って言われたことです(笑)。早実出身だったことも、巨人の選手だったことも知らない。「九州の人だとばっかり思ってました」とかね。

 長嶋茂雄さんだって「テレビによく出る人のお父さんですか」って、もう一茂が先にきちゃうんですよね(笑)。そういう意味では日本というのはもっと歴史、特にかつての名選手みたいなものを大切にしてほしいなと思います。

イチローなんて、格好よかったじゃないですか

 最後に余談だが――取材日、野球殿堂博物館が併設されている東京ドームでは巨人―阪神3連戦が行われていたが、両チームは戦前のユニフォームを復刻したオールドユニフォームで試合をした。それについても池井氏は歴史的な観点からこのように話していた。

【次ページ】 イチローなんて日本でもアメリカでも

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