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イタリア2大会連続W杯予選敗退の真相 「世界の破滅」と激怒ムードだった前回より、さらに深刻な問題は…〈欧州王者の急転落〉 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2022/04/08 17:01

イタリア2大会連続W杯予選敗退の真相 「世界の破滅」と激怒ムードだった前回より、さらに深刻な問題は…〈欧州王者の急転落〉<Number Web> photograph by Getty Images

2大会連続でW杯を逃したイタリア代表。若い世代にとってアズーリは「常連国」のイメージがなくなっていくのかもしれない

「今回の敗退は5年前より深刻だといえる。ロシア大会のグループ予選では同じグループに1位通過したスペインがいて、プレーオフで対戦したスウェーデンは確実に北マケドニアより強かった。イタリアの問題はFWを筆頭にポジション毎のスペシャリストが育っていないことにある」と警鐘を鳴らしたのは、代表OBのご意見番ベルゴミだ。

 著名解説者マウロは「言わせてもらうが、代表のエース級選手はセリエAの上位4クラブのみから選ぶべきだ。7位や9位のクラブのFWなんて(国際舞台の経験不足から)呼ぶべきではない」と苦言を呈している。

監督辞任説もあったが留任したマンチーニの敗因分析

 北マケドニア戦の後、失意のマンチーニは代表監督を辞するのではないか、という声が飛び交った。契約は2026年までたっぷり残っているが、後任候補として元中国代表監督カンナバーロや元ナポリ監督ガットゥーゾの名が上がった。

 だが、敗退直後から留任要請と今後の全面サポートを訴えてきたFIGC(伊サッカー連盟)グラビーナ会長との話し合いを経て、マンチーニは代表監督続投の意志を示した。

 敗戦直後の呆然とした表情から幾分落ち着きを取り戻した指揮官は、再出発への抱負を述べた後、あらためて敗因を問われた。

 敗退に直結したのは無論北マケドニアに喫した黒星だが、マンチーニは「(W杯予選の後半戦が始まった)9月の時分から、どう策を講じようとも悪い結末にしかならないのではないか、と危惧していた」と秘めていた不安を吐露した。

5年前は「世界の破滅」と国民総激怒モードだったが

 5年前の予選敗退にあったのは“怒り”だった。

 もちろん多くの涙も流れたが、「アポカリプス(世界の破滅)」と呼ばれた代表史上60年ぶりの歴史的大失態に、現役、OBを問わず選手や指導者、メディアや国民、老若男女が「俺や私たちの代表を汚された」と憤慨した怒りの方が大きかった。

 怒りの矛先には、プレーオフ中に選手の造反を招くほど求心力に欠けた当時の代表監督ベントゥーラや無責任極まりない小役人風情のタベッキオFIGC会長というわかりやすい戦犯がいて、世論は悪役たる彼らを追放した。“アッズーリは生まれ変わるのだ”という改革への道が明快に示されていた。

 しかし、今回の予選失敗は、保身と無策に汲々とした老害2人に責任を押し付ければよかった前回の敗退とは様相が異なっている。

 イタリアがW杯切符を逃した原因は、ワールドクラスのFW不在に始まる戦力不足だけだろうか。EURO本大会にあった勝負度胸の喪失だろうか。

 アッズーリ挫折の真相は他にあるのではないか。

【次ページ】 「俺は、EUROで優勝した夜より……」

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