「高難度のジャンプを入れない」というリスクに打ち勝った

　その原動力となったのは、やはり坂本の積み重ねてきた時間にほかならない。

　4回転ジャンプもトリプルアクセルも組み入れないと自ら決意して今シーズンに臨んだ。

　高難度のジャンプを入れない分、リスクを背負うことにもなった。ミスが許されないということだ。その上で、1つ1つの要素に磨きをかけて、GOE（出来栄え点）で大きな加点を得られるようにする必要があった。自らにプレッシャーをかけつつ、打ち勝った成果が、北京五輪でのショートプログラム、フリー、双方をミスなく滑り、しかも高い評価を得ての銅メダルであった。培った地力があってこそ、成し遂げられた80点台である。

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坂本のスケーティング、表現力が実った瞬間だった

　そしてミスしないことはむろんのこと、ジャンプをはじめとする要素すべての細かなところまで磨き上げたこと、スケーティングをはじめとする持ち味を最大限にいかしたこと、何年もかけて表現の向上にも取り組んできたこと、その成就でもある。

　ショートプログラムでトップに立った坂本は、25日深夜にフリーを迎える。

「いつも世界選手権は不完全燃焼に終わっています。だからパーフェクトにやろうと思って大会に来ました。フリーは後半が体力的にきついなと最近感じているので、なんとか後半乗り切れるように、しっかりできるように頑張りたいです」

　まずは自分の演技を。そう誓う。

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