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東京五輪で使われたテニスの審判台は“なんと20万円超”の高級品だった! 担当者が語る「作るのは飛騨高山一流の木工職人」

posted2022/03/13 11:00

 
東京五輪で使われたテニスの審判台は“なんと20万円超”の高級品だった! 担当者が語る「作るのは飛騨高山一流の木工職人」<Number Web> photograph by JMPA

東京五輪会場の「有明テニスの森公園」で使用された審判台のこだわりとは…?

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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JMPA

『Sports Graphic Number』で好評連載中の「スポーツまるごとHOWマッチ」を特別に公開します! <初出:1041号(2021年12月2日発売)、肩書きなど全て当時>

 東京五輪を機に生まれ変わったのは、国立競技場だけではない。テニスの聖地として知られる「有明テニスの森公園」も改修され、老朽化が目立っていたクラブハウス・インドアコートがリニューアルされた。

 インドアコートで目を惹くのが、アーチ状の「トラス梁」だ。ドーム型の天井に張りめぐらされるのは、北海道産のカラマツ。日本で育まれてきた木の文化と技術に、太陽光が調和したナチュラルな内観となっている。

 木へのこだわりは細部に及ぶ。新たに導入された審判台は、「株式会社ルイ高」のSUS(移動式)有明モデル「RT-T070461」(税抜き20万7000円)。その座板にも木が使われている。

 営業管理部責任者の岩藤浩司さんが語る。

「木が採用されたわけは、視覚的にインドアコートにフィットさせるため。しかし、それだけが理由ではありません。審判台は安定感や座り心地がなにより大事。ですから素材選びでは当然、機能性も重視しています」

飛騨高山の高級家具メーカーが加工

 座板に使われる木はただの木ではない。インドア用は「多摩産の杉」、屋外用は抜群の耐久性で知られる、「アコヤ」なのだ。

「アコヤは白アリや腐朽菌の被害に強く、また湿気や水分の影響を受けにくいため、屋外でも50年の耐腐朽菌耐用年数がメーカー保証されています。また廃棄の概念をなくした環境認証“C2C”のゴールド認定を受けているので、環境にやさしいという特長もあります」

 木材は金属とは異なり、炎天下でも熱くならず、冬場でも極端に冷たくならない。さらに適度な摩擦もあって滑りづらい。そうした木材の中でも、アコヤはもっとも審判台に適していると判断されたのだ。

 しかし、妥協のないものづくりに邁進するルイ高は、さらなる高みを追い求める。非の打ちどころのない素材であるアコヤの加工を、たしかな腕を持つ職人たちに託した。

「“飛騨の匠”と呼ばれるように、飛騨高山には昔から一流の技術を持つ木工職人がいます。弊社では、その飛騨高山の高級家具メーカーに依頼して、そこでつくられているイスと同じように加工してもらっています。座面を大き目に包み込むような曲線に仕上げているため、体格の大きい外国人審判員が長時間座っても疲れにくいつくりになっています」

 観衆を魅了するゲームには、審判の研ぎ澄まされたジャッジが欠かせない。さすがはテニスの聖地、有明の森は審判台も一級品だ。

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