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敏腕の女性栄養士がリバプールを変えた… 名将クロップも「ワールドクラスの補強」と絶賛の食事改革〈食堂には肉の熟成庫〉

posted2022/04/05 17:00

 
敏腕の女性栄養士がリバプールを変えた… 名将クロップも「ワールドクラスの補強」と絶賛の食事改革〈食堂には肉の熟成庫〉<Number Web> photograph by Getty Images

栄養も選択肢も豊富な食事にワイナルドゥムもご満悦!?

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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Getty Images

選手の質、指揮官の戦術、熱狂的ファンの後押し……。リバプールが躍進を遂げた理由は、これだけじゃない。軽視されがちなセットプレーから毎日の食事まで。緻密に計算された最強クラブ構築への独自の戦略とは。CL制覇を狙うプレミアの名門リバプール。Number1021号『不死鳥リバプール大研究』(2021年2月18日発売)より「リバプールを変えた最強のメソッド 栄養管理/スローイン/データ分析」を配信します(全3回/#2#3も)。

 食事は選手にとってガソリンだ。できる限り良質な物を口にした方がいい。だが好みや習慣は幼い頃からの積み重ねで、改善するのは簡単ではない。ユルゲン・クロップはリバプールに来たとき、選手たちの食事に対する意識の低さに頭を抱えた。

 これを解決するために招聘したのがモナ・ネマーだ。モナはスポーツ栄養学の修士号を取ったあとに調理師の資格も取り、アンダー世代のドイツ代表を経て、2013年からバイエルンで働いていた。クロップは'16年夏に彼女を引き抜き、栄養部門責任者に任命する。シェフら約20人を束ねる大役だが、バイエルン時代にペップ・グアルディオラからも高く評価されたモナの戦略はシンプルだ。

「私の仕事は選択肢を豊富にし、選手が自ら学びたくなるシステムを作ること。強制や禁止は一切しません」

食堂には肉の熟成庫まである

 まずモナは食材集めから始めた。英国中を飛び回り、鹿肉などのジビエ、近海の魚、無農薬の牧草で育った牛、トウモロコシで育てられた平飼いの鶏、季節物の野菜を調達。食堂には肉の熟成庫まである。

 モナはニューヨークタイムズ紙のインタビューでこう語った。

「牛や鶏がどんな環境で育てられたかはすごく大事。高い栄養価を取れるように、本物の食材にこだわっています」

 保存料や添加物を口にしないために、ドレッシングやソースは手作り。目で楽しめるようにシリアル食品だけでも20種類が用意されている。

 高級オーガニックレストランのような食事が供されたら、誰でもテンションが上がるだろう。選手たちは食事改善にどんどん前のめりになっていった。

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