昨年7月に山崎（隆之）先生と藤井先生の対局を引き受けた際、藤井先生の奨励会時代を知る折田（翔吾）先生にお話を聞きました。藤井先生が奨励会に入るか入らないかくらいの頃からすでに噂を聞いていたそうで、気づいたらプロになっていたそうです。実際に見てきた方の「藤井先生はものすごく将棋のことを考えてらっしゃる印象です」という言葉は印象的でしたね。

この2年で、藤井先生は急速に大人になったように思います

　観戦記を書いてきた2年間で、藤井先生は急速に大人になったように思います。以前は質問に対する答えの“枝”が3つほどだったのが、竜王戦の時は5つくらいに増えた印象を受けました。また「高校に行って、良かったことは何か。将棋にどんな影響があったか」について聞いた際に「それも一局です」と将棋界に伝わる表現で返してくださるなど、言葉選びもさらに深みを感じるようになりました。

　今は女流棋士兼観戦記者として活動している私ですが、実はこういった立場になるまで観戦記という存在自体を知りませんでした。実際にやってみると、周りの先輩方に比べて力不足を感じる毎日です。

　一方で私の質問に対する棋士の方々の回答から勉強したことは多く、その点は本当にいい経験です。その蓄積をもとに、藤井先生の観戦記を書けるというのはありがたいこと。そして、藤井先生なら誰も見たことのない景色に連れていってくれるのでは――それを間近で見ることができるかもしれない。そういう楽しみはありますね。

王将戦第4局の藤井竜王（代表撮影）©JIJI PRESS

　でも、その頃まで私は観戦記者を続けていられるのでしょうか？　締め切りもあって大変でツラい。いつも辞めたいと思っているんです（笑）。

《Number1044号『［目撃者の証言］私が見た王者・藤井――藤井奈々（女流棋士＆観戦記者）「風呂上がりに尋ねた質問」』より》

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。