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世界選手権の敗北、コーチからの卒業…4年間は宇野昌磨をどう変えたか「(鍵山に)いつまでも『尊敬している存在です』と言われるように」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2022/02/11 11:45

世界選手権の敗北、コーチからの卒業…4年間は宇野昌磨をどう変えたか「(鍵山に)いつまでも『尊敬している存在です』と言われるように」<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

北京五輪で銅メダルを獲得した宇野昌磨。日本フィギュアスケート史上最多の獲得数となった

 従来、自身の立場への責任感は持っていたが、周囲に目を向ける姿勢がさらに強まった。宇野自身もその変化を自覚している。

「これまではいろいろなことに挑戦する、自分のことだけでした」

 周囲のサポート、応援するファンに応えたいという思いが強まり、だから「結果を残したい」とも考えるようになった。

一人立ち、そして不調からの脱出「変わったのは氷以外」

 五輪の翌シーズン、最大の目標であった世界選手権では優勝を期した。

「結果を求めて挑みたいなと思っています」

 だが、思い描いた通りにはならなかった。4位と表彰台にも上がれなかったのである。

 また、大きな出来事があった。スケーターとして一生を過ごそうと考えていた「グランプリ東海クラブ」を離れたのである。それは幼少期から指導を受けてきた山田満知子、樋口美穂子コーチのもとから卒業することを意味していた。しかも新たなコーチは不在のまま、2019-2020シーズンを迎えた。グランプリシリーズ初戦のフランス大会は8位。初めて表彰台を逃した宇野はキスアンドクライに一人座り、涙を見せた。置かれている環境を思わせた。

 だがそのままでは終わらなかった。コーチにステファン・ランビエルを迎えると、全日本選手権では4連覇を達成。なによりもあふれる笑顔があった。

 2020-2021シーズンの世界選手権では、改めて自身の変化についてこう話している。

「氷の上での練習内容は、今までとそれほど変わっていません。変わったのは氷以外、スケートを楽しくやらせてもらえるようになったというか。よりスケートに楽しさを感じられるようになりました」

国別対抗戦の敗北から得た意識「どこまでも成長したい」

 ただ、世界選手権(4位)のあと、新調した靴が合わない問題を抱えつつ臨んだ世界国別対抗戦では、納得のいく演技をすることはできなかった。責任を感じつつ、それでも前を見据えた宇野は、新たに大切な柱を手にしていた。

 それは「どこまでも成長したい」という意識だった。それはもともと抱いていた思いでもあった。原点に立ち返ることができた、とも言える。

【次ページ】 「いつまでも『尊敬している存在です』って言われるように」

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