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山本由伸23歳「2021年の3503球」は2022年に影響するのか 菅野智之や大野雄大らエースの“フル回転した翌年成績”は? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki/JMPA

posted2022/01/08 11:02

山本由伸23歳「2021年の3503球」は2022年に影響するのか 菅野智之や大野雄大らエースの“フル回転した翌年成績”は?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/JMPA

日本シリーズや五輪で快投を見せた山本由伸。パMVPの2022シーズンはどうなるか

 イチローがMLBに移籍した2001年には、ランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)の4076球を筆頭に、3000球投手は両リーグで58人いた。2010年は69人、2015年は41人、そしてコロナ前の2019年でも29人。減少してはいるが各球団のエース級は3000球を投げていたのだ。しかし2021年はザック・ウィーラー(フィリーズ)の3205球を筆頭にわずか10人に減った。

 先発32、3試合、中4日、6回100球以内で投げて3000球というMLBの先発投手のパターンが崩れつつあるのだ。

 MLBではもともと球数を厳しく管理する傾向が強いが、大型契約を結ぶことが多いエース格の先発投手を長く稼働させるために、球数管理をさらに強化したのだろう。

 近年は救援投手を先発させる「オープナー」など、新たな投手起用方も出てきている。

 NPBもMLBと軌を一にして「先発投手を守る」方向に舵を切ったと言えるのではないか。

無理をさせたくないが大一番では……というエースの宿命

 さて、山本由伸である。投手起用について熟知する中嶋聡監督は、できればポストシーズンも無理をさせたくなかったとは思う。しかし山本由伸はエースである。ここぞ、というしびれる場面で球数をセーブすることなど考えられない。それもあって、山本は近年まれな球数を投げるに至ったのだ。

 3516球を投げた2013年の田中将大は翌2014年MLBに移籍、ヤンキースでもローテを維持し、オールスターにも選ばれるが7月9日に右ひじ靱帯を部分断裂。トミー・ジョン手術は免れ、温存療法(PRP療法)でシーズン中の復帰を果たした。

 3544球を投げた2014年のメッセンジャーは翌2015年も開幕投手、5月末から自己最長の27イニング連続無失点。9勝どまりながら3255球を投げた。

 投手の投球数の問題は「個人差」が大きい。山本由伸がメッセンジャーのように故障知らずの剛腕である可能性もあるが、山本はそれ以前は2019年の2134球が最多。2020年は1961球だった。ここ2年よりも山本に負担があるのは否めない。

 オリックスには宮城大弥(2021年2421球)をはじめ、田嶋大樹(2511球)、山崎福也(1862球)など有力な先発投手が山本以外にもいる。今季は、こうした先発の力も合わせてペナントレースを戦ってほしい。

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