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1万2000人の地元若者のデータ分析…金満とは無縁のR・ソシエダ、独自すぎる“持続可能なチーム強化策”とは? 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2021/12/23 17:00

1万2000人の地元若者のデータ分析…金満とは無縁のR・ソシエダ、独自すぎる“持続可能なチーム強化策”とは?<Number Web> photograph by Getty Images

決して金銭的に恵まれているわけではないR・ソシエダだが、地域との絆を強めながらチーム強化を進めている

全員に関するあらゆる情報を収集

 そしてもう1つが、R・ソシエダだ。

 1996年にトップチームのデータ収集を外注して、スペインにおけるこの分野の先駆者と言われた彼らも4年前、クラブ内に専門部署を設けた。

 ただし、方向性はセビージャとは異なる。

 R・ソシエダが目を向けているのは他クラブで活躍している選手ではなく、カンテラに所属する250人と、提携関係にある地元周辺80クラブのおよそ1万2000人の若者だ。

  アナリストたちは、全員に関するあらゆる情報を監督、コーチ、医師、カウンセラー、栄養士、学校の教師などから集めている。また、本人には練習前後に身体と精神の状態に関するアンケートを課し、すべてを横断的に分析・評価している。

 そうやって集めたデータを活用することで、各チームの監督は配下の選手一人ひとりの状態と改善すべき点を把握して、個別トレーニングにせよグループ練習にせよ、然るべきプログラムを用意するのだ。

「少年たちを一人前の選手に育てたい。そのためにはデータを継続的に収集して分析するのが一番。横断的な視点は欠かせない」

多くの選手はクラブの本拠地から100km以内が故郷

 こう語るスポーツディレクターのロベルト・オラベには、明瞭な目的がある。

「それは他でもない、うちの少年たちと一緒に1部で戦うことだ。選手育成はこのクラブの天分であり、深く根付いている文化だ」

 実際、一昨季からR・ソシエダはカンテラ出身者を主体とする方向に舵を切り、今季もトップチーム登録25人のうち12人は自前の選手だ。

 スペイン代表まで上り詰めたミケル・オジャルサバルを筆頭に、マルティン・スビメンディ、アンデル・ゲバラ、イゴール・スベルディア、アンデル・バレネチェアなど多くの選手が、クラブの本拠地であるサン・セバスティアンから100km以内を故郷とする。他国出身選手は5人しかいない。

 それでいて、チームパフォーマンスは高いレベルで安定している。

 つまり、莫大な移籍金を必要とせず、地域との絆を強めつつ戦える。そんな持続可能なチーム強化モデルなのだ。

 財政基盤が弱いクラブにとっては理想的な形だろう。

 R・ソシエダの見事な工夫と努力の賜物だ。

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