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「賞金の65%は国に」「国家行事でウィンブルドン辞退」の過去も…意外と知らない“中国テニス界の闇”《トップ選手が行方不明?》

posted2021/11/23 11:05

 
「賞金の65%は国に」「国家行事でウィンブルドン辞退」の過去も…意外と知らない“中国テニス界の闇”《トップ選手が行方不明?》<Number Web> photograph by Getty Images

中国共産党の大物からの性的暴行をSNSで告発した中国のトップ選手・彭帥。その後、投稿は削除され「音信不通」であることが報じられた

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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 ダブルスの元世界ナンバーワンだった彭帥(ポン・シュアイ)の名を、久々に、まさかこんなかたちで聞くとは思いもよらなかった。日本のワイドショーを賑わせ、米中関係など外交問題にまで発展した中国の彭帥の「#MeToo」告発。元副首相でもあった中国共産党の大物からの受けた性的暴行をSNSで暴露した衝撃的な事件は、ある意味、予感した通りの謎めいた展開を見せている。

笑顔の動画も公開されたが「真偽は不明」

 投稿は削除され、中国でこの件にまつわる情報は検閲対象となり、当人は「音信不通」「行方不明」と報じられていた中、中国の国営メディアは彭帥がWTA(女子テニス協会)に宛てて送ったとされるメールを公開。そこには「私が性的暴行を受けたということは真実ではない。行方不明でもなく、自宅で休んでいるだけだ」などと書かれていた。WTAのCEOであるスティーブ・サイモンが「捏造ではないか」という疑念を含めた声明を出すと、国営メディアは次に彭帥のプライベートの写真や“最新”とする動画を出してきた。そこには確かに笑顔の彭帥が映っているが、WTAはなお「不十分」としている(編集部注:IOC(国際オリンピック委員会)は22日、彭帥氏がビデオ通話でバッハ会長に無事であることを伝えたと発表した)。

 テレビで報じられる「ホウ・スイさん」にはどうもピンとこないが、「ポン・シュアイ」なら日本のテニス関係者やテニスファンで知らない人はいない。ツアーレベルの日本人選手の多くが対戦しており、関係者の中では選手たちが呼ぶ「ポンちゃん」で通っていた。

プロとしての自立は許されない…中国テニス界の闇

 2013年のウィンブルドン、2014年の全仏オープンなどを制したダブルスの名手で、シングルスでも2014年にの全米オープンでベスト4入りを果たして自己最高は14位だった。中国テニスの絶対的な英雄はシングルスで全仏オープンと全豪オープンを制覇した李娜(リー・ナ)だが、その李娜がアジア選手として史上最高の2位となった2014年の2月17日に、ダブルスで中国初の世界1位に上り詰めたのが彭帥だった。

 それは、2000年代に台頭してきた中国女子テニスの勢いが最高潮に達したときだっただろう。彼女たちの〈選んだ道〉の勝利でもあった。中国テニス協会の管理体制から抜け出し、個人で自由にマネージメントを行う真のプロの道。多くの国のテニス選手にとって当たり前のことが、中国ではそうではなかったのだ。

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