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〈日本を救う代表初ゴール〉田中碧「普通の選手で終わってしまう」… 今だから話せる“サッカーが楽しくなかった理由”

posted2021/10/13 11:04

 
〈日本を救う代表初ゴール〉田中碧「普通の選手で終わってしまう」… 今だから話せる“サッカーが楽しくなかった理由”<Number Web> photograph by Getty Images

オーストラリア戦で先制ゴールを挙げた田中碧。試合後のインタビューでも日本を背負って立つ意思を感じさせる言葉を口にしていた

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林遼平

林遼平Ryohei Hayashi

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Getty Images

カタールW杯アジア最終予選、日本代表はオーストラリア代表に2-1の勝利を挙げ、是が非でもほしかった勝ち点3を確保しました。その大事な一戦で大仕事をしたのは田中碧。W杯予選デビュー戦ながら先制ゴールを挙げるなど攻守両面で存在感を発揮したプレーメーカーの葛藤と成長を描いた記事を再公開します(初公開:2021年9月29日)

 あれは昨年、12月上旬のことだった。

 J1記録である同一シーズン12連勝や史上最速優勝を達成するなど、圧倒的な強さでリーグを制した川崎フロンターレ。紛れもなく、そのチームの中心にいた田中碧から思いがけない言葉が返ってきた。

「中盤戦以降は自分のプレーが良かったと感じられる試合が1つもなかったですね」

 チームの結果とは裏腹に、田中は失意のどん底にいた。ピッチを縦横無尽に走り回りながら攻守のつなぎ目としてボールにかかわり、球際の強さを披露して守備面でも存在感を発揮する。得点やアシストも記録するなど、前年から比べると大きな進歩を遂げているようにも思えた。

 ただ、田中本人にとっては「終わって自分の採点を見ると6.0を付けられているんですけど、やっている自分からしたら5.0、4.5」という自己評価だった。

 チームが勝ち星を重ねる中で、自分が勝利に貢献できている手応えがない。アンカーでプレーしていても、インサイドハーフでプレーしていても、「勝利に直結するプレーをしていたか」と考えると、そうではない。「今年はもっとうまくなれる」と思っていたからこそ、そのギャップに苛まれた。

局面を変えるパスも影を潜める

「やっていて楽しくないし、下手になっているとばかり思っていました。プレーしていても自分ではないような感じだった。過去の自分と比べたりしてしまってすごく苦しかったですね。プレー面においてもメンタルに面においても、一番下まで、落ちるところまで落ちたなという感じでした」

 確かに秋口から田中のプレーにキレが無くなっているのは感じ取っていた。もともとボール奪取や展開力に優れ、「止める、蹴る」の技術力が高く、チャレンジのパス以外ではミスの少ない選手だった。だが、どこかダイナミックさを欠き、シンプルなプレーにも判断が遅れる。ミスが続き、局面を変えるパスも影を潜めるようになった。考えれば考えるほど、どツボにハマっていったのである。

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