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“神童”那須川天心に“レスリング金”須崎優衣も…格闘技のスターはなぜ千葉県松戸市から生まれるのか? 地方都市ならではのメリットも

posted2021/09/20 11:00

 
“神童”那須川天心に“レスリング金”須崎優衣も…格闘技のスターはなぜ千葉県松戸市から生まれるのか? 地方都市ならではのメリットも<Number Web> photograph by JMPA

松戸で生まれ育った須崎。他競技では元横綱・稀勢の里(現荒磯親方)も松戸にあった旧鳴戸部屋の在籍だった

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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 先日、東京オリンピックのレスリング女子50kg級で金メダルを獲得した須崎優衣が松戸市民栄誉賞を受賞した。「金メダルを持って(地元に)帰ってくることができて本当にうれしい」(須崎)

 須崎は中2で東京にあるJOCエリートアカデミーに入るまで、松戸で生まれ育った。いまでも実家に戻ると子供のときから通っていた寿司屋に顔を出すなど地元愛は強い。

 松戸といえば“神童”那須川天心の出身地でもある。両者の共通項は父が格闘技好きで、指導にも熱心だったことか。調べてみると、さらに興味深い事実が判明した。那須川が総合格闘技に挑戦していた頃寝技を習いに通っていたパラエストラ千葉ネットワークの鶴屋浩代表は現役時代に須崎の父・康弘氏にボクシングの基本を叩き込まれたというのだ。

 康弘氏も娘と同じ早稲田大レスリング部出身ながら、卒業後はプロボクサーとして活動していた時期がある。さすが広いようで狭い格闘技界。ここで松戸のプロとアマはつながるわけだが、人口約50万人という千葉第3の都市には強い格闘家を輩出する特別な土壌があるのか。

魅力を感じて移住したメダリストも

 そもそも松戸界隈には日本体育大柏高、専修大松戸高などスポーツ有力校が多いが、須崎と那須川はそういう高校に進学したわけではない。先ごろ、「松戸には格闘家を強くさせる何かがあるの?」という質問をしたら、須崎は「特にはないと思うんですけど」と答えに窮した。

 とはいえ、松戸はキックに転向しやすい空手やキッズレスリングが盛ん。後者は新興の鶴屋氏が週6回教えるジムを出すと、古参の複数のレスリング教室は合同教室をスタートするなど、新旧が切磋琢磨しながら発展してきたという歴史がある。

 また地方都市のメリットで、鶴屋氏が仕切り、隣町にあるパラエストラ柏では夜10時に通常練習が終わっても、その後0時過ぎまで選手がそれぞれ補強に励んでも周囲から苦情が来ることはないという。

 それに加えて同階級の強豪が多いという練習環境に魅力を感じ、昨年総合格闘技に転向したリオ五輪の銀メダリスト太田忍は最近になって千葉に引っ越し、パラエストラ柏所属となった。松戸界隈は、ポテンシャルの高いファイターを引き寄せる磁力を帯びているのか。

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