アーティスト王座は白川の復帰後、ハイペースでタイトル戦を重ね最多防衛記録を更新中だ。さらに「シンデレラ・トーナメント」では格上を食ってベスト4進出。キャリア3年未満もしくは20歳以下が対象のフューチャー・オブ・スターダム王座争奪トーナメントにもエントリーした。決勝で白川に敗れるも、すぐにリマッチを行ないベルト奪取。2冠王になると、大規模なリーグ戦「5★STAR GP」に突入した。敗れはしたがタッグ王座、朱里が持つSWA世界王座にも挑戦している。

「毎回、これが終わったら落ち着くだろうと思っても全然落ち着かないんですよ。ずっと命の危機にさらされてる感じで（笑）」

　常に大一番が目の前にある状況だった。だからこそ鍛えられた。団体が違えばファイトスタイルも変わる。しかも“若手枠”からタイトル争いの最前線へ。7番勝負ではひたすらボコボコにされた。

「それまで受けたことがない技もあったし、顔面蹴られ放題。“この技を受けれるのか？”“これに耐えられないならやめろ”と言われてるような試合ばかりでした」

　ただ、手ひどくやられればやられるほど「教えられている」という意識を持った。何を教えられたのかといえば、スターダム流の激しいプロレスだ。プロレスのスタイルは様々であり、そこに貴賎はない。ただスターダムで活躍するには、スターダム流の闘いを身につける必要があった。

「凄いところに来たなと思いましたけど、そういう厳しくて激しいのは、私としては好きな世界なんですよ」

「“普通”って言われるのが一番嫌です」

　ギリギリのところで闘っているのは自分だけではないことにも気づいた。

「試合が激しいから、最後はみんな気持ちだけで闘ってるんですよね。赤いベルト（団体最高峰のワールド・オブ・スターダム）のチャンピオンも、ベルトを巻いてるから強いというわけじゃない。赤のチャンピオンは強くなくてはいけない、負けるわけにはいかないという葛藤が見えるんです。だから赤のチャンピオンは尊い。入場とかコスチュームは華やかですけど、スターダムは人間くさいリングだと思います」

　試合でボロボロにされ、インタビュースペースで対戦相手に「眼中にない」と言われたこともある。ファンにも叩かれた。ウナギの試合にもむき出しの人間くささがあり、その時期を乗り越えたから2冠獲得やトーナメントのベスト4進出につながった。進行中のリーグ戦では現在まで5戦して2勝2敗1分。たむから金星をあげてもいる。“スターダム歴”1年未満としては十分な実績と言っていい。

　参戦当初、団体関係者に「いつでも準備しといてね」と言われた。いきなりどんなチャンス、あるいは試練が来るか分からない。その時にファンや関係者の想定内で終わってはいけないのだとウナギは解釈した。

　どんな技でも受けられる強靭な身体を作り、攻撃力を高め、技の種類を増やす。それに加えてスターダムの全選手に「なんだコイツは」と自分を意識させたい。SNSでは対戦予定のない選手にもグイグイ絡む。いつ闘うことになってもいいように“火種”を投げまくっているのだ。それも「準備」の一つ。

「心の折れなさとウザさでは誰にも負けないです」

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