稲垣　大きな目標が延期になって、目の前から一時的にでも消えてしまったのは辛かったと思うな。僕も上演が決まっていた舞台が突然なくなったりして、そういった時の気持ちはよく知っているから。

香取　時期によってルールやガイドラインが変わっているでしょ？　僕も緊急事態宣言で中止になっちゃった舞台もあれば、宣言中でも対策をきちんとした上でフルに観客を入れられた舞台もあったからね。

草なぎ　難しいよね。

香取　もちろん感染対策は大切だし、ルールは守らないといけないけど、正直、無観客はすごく残念！　生で見ると、試合の迫力ってすごいから。

草なぎ　車いすラグビーなんてとくに音が激しい。試合を見たけど、「ラグ車」のぶつかりあう音なんて本当にすごいよね。

稲垣に車いすラグビーの魅力を語る（左から）倉橋香衣、池透暢、乗松聖也　©︎Asami Enomoto

香取　パラスポーツって普段はどうしても注目度が低いし、お客さんもそう多くは集まらない。でも東京大会はおそらく満員になって、声援もたくさん飛ぶと思っていた。それを「今まで注目されてなかったから戸惑いもあるけど、嬉しいですね」って笑顔で話していた選手たちのことを思うと、たくさんの人にテレビで見て欲しいなぁ。

稲垣　僕らの場合はさ、無観客でもお客さんの存在をちょっと感じられたりするじゃない。感覚的なものだけど、たとえネット配信のイベントでもカメラ越しにファンの存在が伝わってくる。アスリートはどうなのかな。たとえ無観客でも、応援する人の存在を感じたりするんだろうか。

香取　伝わるんじゃないの。何よりパラアスリートの皆さんは負けず嫌いだから、無観客という想定外の状況にも負けないはず。体の障がいでできなかったことが多くあって、でもあるスポーツと出会い、頑張ったらパラリンピックの舞台に立てた。その快感と達成感を知って、意地でもそれを手放したくないって言う選手が多いからね。

稲垣　アスリートの世界は本当にシビアだよね。僕が好きなゴルフにしてもたった1打の差で勝敗が決する。負けず嫌いになるのも分かるな。それに比べて芸能の仕事は勝ち負けがつかないことも多くて、負ける姿を見せることも表現のひとつだし、感性や演技は数字で表せないから。

香取　吾郎さんは趣味のゴルフでも勝ち負けにこだわらないの？

稲垣　他人とスコアを競うことはないね。僕は自分が良いと思えるラウンドができたら、それで幸せというか。

香取　へぇー、面白い（笑）。

草なぎ　僕たち3人ともあまり勝ち負けにこだわる方じゃないじゃない。もちろん勝負の大切さはわかるけど、それまでの過程も同じくらい大事にしてる。パラスポーツの応援チャリティーソングとしてリリースした『雨あがりのステップ』の歌詞がまさにそんな内容で、勝ち負けじゃない価値観を歌に乗せていて、個人的なスタンスにもあっているなって思ってます。

香取　でも、歌を贈ったパラアスリートが、当初考えていた以上に勝ち負けにこだわってるっていうのが面白いよね（笑）。

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