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ベルギーの大砲がクラブ史上最高額の146億円でチェルシーに帰還 10年前の「ネクスト・ドログバ」から「元祖ルカク」への期待 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2021/08/22 17:01

ベルギーの大砲がクラブ史上最高額の146億円でチェルシーに帰還 10年前の「ネクスト・ドログバ」から「元祖ルカク」への期待<Number Web> photograph by Getty Images

世界最高峰のストライカーに成長を遂げたルカクが満を持してチェルシーに復帰。新たなエースとして期待される

セリエAでの2年間で頼もしさがスケールアップ

 28歳と年齢的にもピークに入っているルカクは、その移籍金がエバートンへと去った2014年当時の3.5倍近くに跳ね上がっているように、完成された高級品としてチェルシーに戻ってきた。

 圧倒的なフィジカルの強さ、十分なスピード、そして確かなテクニックは以前からだが、9年前にレンタル移籍したウェストブロムウィッチを皮切りに、4クラブでの400試合近い公式戦出場を通じ、戦術理解、判断、攻守でのオフ・ザ・ボールの動き、周囲とのリンクアップといった能力面も高水準へと磨かれた。

 もちろん、ストライカーとして最も重要な決定力も備える。

 ルカクはエバートンとマンチェスター・ユナイテッドを含むプレミアの他3チームでの計7シーズンに、リーグ戦で平均16得点を決めている。チェルシーではジエゴ・コスタが20得点を奪った2シーズンを除けば、チーム得点王に相当する数字だ。

 そのうえ、得点源としての頼もしさがスケールアップされたセリエAでの2年間がある。インテルを11年ぶりのリーグ優勝に導いた昨季24点は、ファンの熱さと要求の厳しさがチェルシーに勝るとも劣らない環境であることを考えれば、強い精神力を示す数字だとも言える。

 近年では、SNSなどで確認できる地元サポーターのコメントを、毎試合のように選手のパフォーマンスを見ている人々の評価としてスカウトの参考とするクラブもあるようだが、ミラノで愛されて、その裏返しで憎まれたチェルシー入りに際する現地の反応は、いかにルカクが信頼されるCFであるかを物語っている。

指揮官はハーランドやケインよりもルカク加入を望んだ

 さらには、当人が残留の意思を翻して戻ったチェルシーも、1度目の移籍時とは環境が違う。10年前は、若手起用が珍しくないCLグループステージでもベンチに入れなかった。当時のアンドレ・ビラス・ボアス監督には、ルカクを評価する意思さえ感じられなかった。その点、今回は指揮を執るトーマス・トゥヘル自身も、ハーランドやケインよりも獲得が現実的としてルカク加入を望んでいた。

【次ページ】 ベルナーの本領発揮という相乗効果が伴う可能性も

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