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“東京五輪に出られなかったキャプテン”篠山竜青33歳が味わった絶望と本音「チビはもっと頑張らないといけなかった」 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/08/20 17:01

“東京五輪に出られなかったキャプテン”篠山竜青33歳が味わった絶望と本音「チビはもっと頑張らないといけなかった」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

東京オリンピック直前で日本代表入りを逃した篠山竜青(川崎ブレイブサンダース所属)。五輪が終わった今、心境を明かした。

「所属チームでのプレーに関していうと、『これで俺が選ばれなかったならば仕方がない』というところまではやり切れなかったから。昨シーズンの川崎ではシュートを打たなければいけないところで打てていなかったし、正しい判断ができていなかったことが多かったんじゃないかなと。苦しみながら戦っていた感覚はあります。アシストのペースは伸びているし、藤井(祐眞)がスタートから出て、僕がベンチから出て行って、チームを動かすこともできると前向きに考えられる部分もあったんですけど。最後のメンバーに選ばれていれば、『あれで良かった』と言えますよ。でも、選ばれなかったということは、代表での戦いを考えればどこかで見直す必要があったんだろうなぁと」

 やり残したことがあったときや、力を抜いてしまったときに味わう後悔とは違う。でも、悔しさは残った。それどういう意味を持つのか、あのときはまだ分からなかったが。

代表のLINEグループで「Thank you」「Good luck」

 篠山には以前から、気にかかっていたことがある。

 メンバー落選を告げられたあとのチームの空気についてだった。これまでも選手選考を兼ねた合宿の節目で人数がしぼられることはよくあった。ただ、誰が外れるかをみんなの前で発表されることはない。落選する選手への配慮からだ。

 だから、外れた選手がチームメイトの誰かにその事実を伝え、それが少しずつメンバー間で共有されていく、というのが従来の風習だった。落選が恥ずかしいことであるかのようにとらえられかねない風潮は少し変えたいと思っていたから、篠山は自ら落選の事実を伝えることにした。

 偉そうに言うのも違うけど、明るく振る舞うのもおかしい。迷いながらも、選手の連絡用のLINEグループに「Thank you」と「Good luck」という2つのメッセージだけを送ることにした。

 ほどなくして、昨シーズンまで川崎のチームメイトとして戦っていた辻直人が部屋に来てくれた。

「竜青さん、あのメッセージはちょっと……。でも、なんと報告すべきなんでしょうね? 難しい。正解はないですわ」

 合宿の途中にチームを離れることになる辛さは、辻もわかっていた。だからこう、言われた。

「気まずいのはここから、ですよ」

【次ページ】 夕食会場では、みんなの顔が引きつっていた

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