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「たかが世界選手権」「空手は五輪競技じゃないから」 不調も“パワハラ”も越えて競技普及に尽くした植草歩を待っていた厳しい現実 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/08/08 17:05

「たかが世界選手権」「空手は五輪競技じゃないから」 不調も“パワハラ”も越えて競技普及に尽くした植草歩を待っていた厳しい現実<Number Web> photograph by Getty Images

植草歩の東京五輪は終わった。ここまで長い間、空手界の発展に尽くしてきた29歳はこの祭典に何を思ったのか

「『たかが世界選手権』と言われちゃうんですよ」

 2016年に正式に採用が決まったあとも広報活動を担い、また2015年に全日本選手権初優勝、2016年に世界選手権優勝など結果を残したことから、メダルを狙える存在としても注目されるようになり、メディアで取り上げられる機会も増えていった。

「多くの人に空手を知ってもらうことで空手をやる人も増えるし、理解してくれる会社も増えて環境もよくなっていくと思う。空手がもっとメジャーになっていくためにも、テレビとかに出させてもらって広がっていけばと思っています」

「テレビで放送される、されないという違いもありますよね。やっぱりテレビの力は大きい。2014年の世界選手権で3位になりましたけど、『たかが世界選手権』と言われちゃうんですよ。悔しいですよね」

パワハラを告白するなど、順調にはいかなかった

 一方で、空手界を代表するように普及に務めることが重荷になってもいた。上位進出が断たれたあと、植草は語っている。

「楽しかった空手から、表に出るようになって、最初は『実力が伴っていないのではないか、キャラクターだけで走ってしまっているのではないか』と苦しかったです」

 代表に選ばれ、いざ五輪へと向かうも、新型コロナウイルスの影響で練習拠点のやりくりに苦労し、そして帝京大時代から指導を受けている全日本空手道連盟の強化委員長からのパワーハラスメントを告白する出来事もあった。半月以上の間、満足に練習できない時期が生じるなど、大舞台への足取りは順調さを欠いた。

 近年は国際大会などで好成績を残せないことも少なくなかった。コロナのもとでの最初の大会となった昨年12月の全日本選手権では3回戦敗退、今年5月の国際大会でも同じく3回戦で敗れていた。

【次ページ】 五輪採用の動きで環境が大きく変わってきた

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