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「家出して3カ月の漫喫暮らし」「枕をしたら仕事をやるよ」壮絶な過去を超えてスターダムの朱里が亡き母に誓う“赤いベルト”の夢 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2021/07/29 17:00

「家出して3カ月の漫喫暮らし」「枕をしたら仕事をやるよ」壮絶な過去を超えてスターダムの朱里が亡き母に誓う“赤いベルト”の夢<Number Web> photograph by Essei Hara

7月31日、8月1日の2連戦で幕を開ける『5★STAR GP 2021』。その先に、朱里は“赤いベルト”を見据えている

「朱里という存在を見てもらいたい」

 UFCの2年契約が終わって、朱里はプロレスに戻って来た。

「多くの団体のリングに上がりましたが、一番注目されている団体は女子ではスターダムだと思っています。露出するメディアの数が違うし、大きな会場でも多く試合をしている。今まで私はプロレスでそこまで注目されたことがないから、嫉妬だってしていました。スターダムに参戦するようになって、『週刊プロレス』やメディアの取り上げが多くなったのはすごくうれしかったです。痛い思いをして、命を賭けて戦って、やるからには一番輝きたいし、たくさんの人に朱里という存在を見てもらいたい。だからスターダムの一員になりたい、と思っていた矢先、母が……」

「もっとたくさんやりたいことがある」と言っていた大好きな母は、58歳で他界した。

 2020年10月3日、横浜武道館。スターダムのアイコンは強かった。赤いベルトをかけた試合で岩谷麻優には負けてしまった。

「赤いベルトはスターダムの象徴で、外からきた中途半端な気持ちじゃあのベルトは獲れない。だから覚悟をもってスターダムに入団しました。今度は自分が赤いベルトを巻いて、挑戦者として岩谷麻優を迎えたい」

「絶対に赤いベルトを巻くんだ」

 朱里はスターダムに来て悩んでいたことがあったという。

「どうしたらいいのか? と。自分のポジションも考えた。一歩引いちゃうという部分も。どうしたらいいかと悩みに悩んでいた時期を越えて、今年の4月あたりに吹っ切れました。自分のやりたいように自分のやりたいプロレスを見せよう。ウジウジしている暇なんてない。なんのためにスターダムに来たのか、輝くために、自分の見せたいもの見せるために、人生悔いなく過ごすためにスターダムに来たんだ。やりたいようにやればいい。自分の思いをぶつける。そして、絶対に赤いベルトを巻くんだって」

 吹っ切れた朱里が挑んだ6月12日の大田区総合体育館での林下詩美とタイトルマッチは、延長戦の末の壮絶な43分両者KOだった。

「悔しかったです。胸が張り裂けるような思いでした。本当にあの試合に賭けていました。でも、世界的に反響があったというのはすごくうれしかった」

【次ページ】 『5★STAR GP 2021』を制覇した先の“夢”

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