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[初代王者の勲章]堀米雄斗「誰もやったことがないからこそ」

posted2021/07/30 07:04

 
[初代王者の勲章]堀米雄斗「誰もやったことがないからこそ」<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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Kaoru Watanabe/JMPA

初めて採用されたスケートボード男子ストリートを制したのは、地元の江東区で「スケボーだけをして育った」堀米だった。追い込まれた決勝での大逆転で、金メダル以上の勲章も手に入れた。

 NBD――。

「誰もやったことがない」を意味するNever Been Doneを意味する3文字はスケーターにとって最も大切な精神を表す。それこそがスケーターの価値を決めるといってもいい。日本人で初めて、世界で初めて、何にせよ“初めて”は大きな勲章になる。

 決勝に入り、45秒間滑るランを2本、ワンメイクのベストトリック5本のうち2本を終えた時点で堀米雄斗は出遅れていた。順位は4位。決して悪くはないが、ランでミスが出てスコアが伸びず、対照的に、最大のライバルと目されていたスケートボード界のスーパースター、ナイジャ・ヒューストン(米国)は着実に得点を重ねていた。

「焦っていた。でも諦めていなかった」

 普通の人間であれば、手堅く確率の高いトリックを出そうとする場面かもしれない。ところが切羽詰まった表情で堀米が考えていたのは逆のことだった。

「今まで出したことないトリックで、練習も決勝の5分前にやり始めただけ。今までやったことがなかったし、入る前には緊張した」

 得意のノーリー(前足で踏み切るジャンプ)を使ったノーリーバックサイド270スイッチボードスライドを初めてのトライで成功させ、10点満点で9.35の高得点を叩き出した。「ちゃんと乗れてよかった」と緊張から解き放たれたような笑みは、会場の空気、試合の流れ、そして堀米自身のムードも一変させた。昼の12時過ぎから始まった決勝。鉄板のように熱く焼けたコンクリートの上でライバルたちがペースダウンしていくのを尻目に、4本目は9.50でトップに浮上。最後の5本目は反対のフロントサイドに回って9.30。次々に大技を繰り出す堀米に誰も追いつけなかった。

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