「sasori選手が笑ってたのは、試合を楽しむことができていたからだと思うんです。試合の中で自分を表現できて、それを楽しめる。私にその余裕はなかったです。負けたらどうしよう、無敗じゃなくなったらどうしよう。そう思って必死にやるしかなかった。だからほんのちょっとの差で勝てたんだと思います」

　9分間だけ頑張れば未来が開ける。そんな気持ちでリングに上がったそうだ。「sasoriに勝った」と「ベルトを巻いたし10連勝したけどsasoriには勝てないレベル」では評価が天と地ほど違う。今後のマッチメイクも変わってくる。

「強い相手とやりたい。他団体のチャンピオンと」

　以前から、何度も何度もそう言ってきた。いわゆる“美女アスリート”として注目されると、同時に偏見も強まる。だからこそ実力で認められたいという気持ちが高まる。

僅差ながら、判定2-0で勝利。未来が開けた瞬間だった

「私が攻撃をもらった時にお客さんが沸いてるのが分かった」

　そしてこのキャリア11戦目で、ぱんちゃんは自分がトップファイターであることを証明した。これまでの試合とは違う感触もあった。

「2ラウンドの後半、私が攻撃をもらった時にお客さんが沸いてるのが分かったんです。ああ、盛り上がってるんだなって。sasori選手のおかげで試合が面白くなった。それも嬉しいです」

　迫力のある、かつスリリングな打撃戦になったのはsasoriの実力だけでなく、ぱんちゃんの闘いぶりも大きかった。彼女が選んだのは“うまい”勝ち方ではなく“強い”勝ち方だ。突進をいなさず押し返した。そこにも価値があった。他の選手にはできないやり方でsasoriに勝ちたい。そういう意味では“女子キック界”との勝負という面もあった。

試合を終え号泣するぱんちゃん

　次戦はタイトル防衛戦をやるつもりだとぱんちゃん。その後はやはり、他団体のチャンピオンと闘っていきたいと言う。

「ファンの方から、やってほしいと言われる選手もいるので。期待に応えたいです。うまく決まってほしい」

　同じ“ヒジなし”でも各団体で細かいルールの違いがあるが、それに対応するだけの技術も身につけつつあるという。

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