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《志半ばで倒れた仲間に捧げたEURO優勝》視聴占拠率は83.6%! イタリア53年ぶりの熱狂を生んだアッズーリの“家族のような絆” 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/07/19 11:01

《志半ばで倒れた仲間に捧げたEURO優勝》視聴占拠率は83.6%! イタリア53年ぶりの熱狂を生んだアッズーリの“家族のような絆”<Number Web> photograph by Getty Images

53年ぶりの欧州王者に輝いたイタリア。その熱狂はしばらく収まりそうにない

国内の視聴占拠率は大会期間中最高の83.6%!

 6月11日の開幕戦から夢のような1カ月だった。

 地元ローマの「オリンピコ」にトルコとスイス、ウェールズを迎え撃ったアッズーリは、グループステージを怒涛の3連勝で首位突破。

 オーストリアを延長で下した決勝トーナメント1回戦から2日後の6月28日、イタリアでは屋外でのマスク着用義務が廃止された。

 準々決勝では優勝候補の一角ベルギーとの難ゲームを2-1で制し、因縁浅からぬスペインとの準決勝は先制しながら追いつかれるも延長戦を凌ぎきり、PK戦で強敵に引導を渡した。

 聖地ウェンブリーでの決勝戦も劇的だった。試合開始2分でイングランドの奇襲から失点したアッズーリは、後半からゲームを盛り返し、67分にDFレオナルド・ボヌッチのゴールで同点に追いつくと、大会3度目の延長戦を経て、再びPK戦へ。

 アッズーリの守護神ジャンルイジ・ドンナルンマが、若くしてPKスペシャリストであることはセリエAでは常識だ。イングランド5人目のキッカー、ブカヨ・サカが蹴ったボールを狙いすましたようにストップした瞬間、アッズーリ53年ぶりの欧州制覇が成就した。

 ひと呼吸遅れて、熱帯夜で開け放った窓から近所中の歓声が聞こえてくる。向かいの家の屋上からは、打ち上げ花火が上がり始めた。道行く車が交わすクラクションや騒音にも老人たちは何も言わない。自分たちもいつか経験した優勝の夜だ。

 決勝戦を中継した国営放送『RAI』と衛星放送『SKYイタリア』2局をあわせた国内の視聴占拠率は、大会期間中最高の83.6%に達した。早速、記念DVDやメモリアルブック商戦も始まった。

 イタリア政府の対コロナ政策諮問機関である科学技術委員会は、優勝を祝う市井の乱痴気騒ぎに「今後の感染爆発に強く警戒する必要がある」と警告を発したが、ローマやミラノ、ナポリやフィレンツェといった都市部だけでなく、コロナウイルス禍被害の中心地だったベルガモの町においても、勝利の雄叫びと解放を求める若者たちを止めることはできなかった。

 大規模な都市封鎖によって存在そのものがなかった“2020年の夏”を取り戻すように、もろ肌脱いだ彼らは三色旗を振り、口々に「カンピオーネ・デウロパ!」と叫んだ。

【次ページ】 スピナッツォーラは目に涙を浮かべて「グラツィエ」

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