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“大坂なおみの姉”まりが振り返る現役時代「妹には絶対に負けられないと」「ゲームではなく、生きるか死ぬか」〈特別インタビュー〉 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byGetty Images

posted2021/07/02 11:02

“大坂なおみの姉”まりが振り返る現役時代「妹には絶対に負けられないと」「ゲームではなく、生きるか死ぬか」〈特別インタビュー〉<Number Web> photograph by Getty Images

今年3月に自身のSNSで「現役引退」を発表した大坂まりさん(25)

「ニューヨークに引っ越すときに、お母さんが日本からアニメのビデオをいくつか持ってきてくれたので、それを良く見ていたんです。『テニスの王子様』や『美少女戦士セーラームーン』は繰り返し見ました」

 異国の地で日本のアニメを見て過ごした姉妹は、現地の幼稚園に行くようになると、友人たちはみんな『NARUTO』に夢中であることを知る。そこで二人は眠い目をこすりつつ、夜遅くまで起きてアニメの放送を待った。日本のアニメは二人にとって、日米のコミュニティをつなぐ架け橋だった。

なおみと毎日試合「妹には、絶対に負けられない」

 1歳半年下の妹もボールをしっかり打てるようになってくると、二人は毎日のように、試合をした。

 その日々を、妹のなおみは次のように追懐したことがある。

「お姉ちゃんは、私と対戦する時はいつも、ミスが減って手堅いプレーになる。毎日負け続けたわたしは、勝つためにあの手この手を試したわ。時にはドロップショットを打ちまくったり、スライスばかり打ってみたり」

 でもスライスはヘタッピだったから、結局は完敗するんだけれどね……と、次女は照れたように笑った。

 一方の姉にしてみれば、「妹には、絶対に負けられないという思い」があったという。

 勝つことを当然とし、常に挑戦される立場に身を置くコートは、時に息苦しさを覚える場所だったかもしれない。妹のなおみも、そんな姉の胸中を「わたしは、毎日色んなことを試していたので楽しかったけれど、お姉ちゃんはきっと、つまらなかったと思う」と慮っていた。

遠征先でのお気に入りは「マイケル・ジャクソンのMV」

 二人のテニスの腕が上達すると、アメリカ各地のジュニア大会に出る機会も増えていく。それと並行してまりは、ポップカルチャーへの情熱や、絵画の才能も育んでいった。

 家からテニスの試合会場までは、父親が運転する車で向かうのが常だ。広大なアメリカ大陸の道はひたすら真っすぐに伸び、車窓からの景色は、どこまでも代り映えなく広がっていく。

 単調なそのドライブの時間を、姉妹は多くの動画を見て過ごした。まりのお気に入りは、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオ。キングオブポップのダンスと歌声にインスピレーションを得るように、彼女は様々な絵を描いたという。車の中は、彼女のアトリエだった。

【次ページ】 テニスは「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」

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