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“思い出の夏”から25年、EUROで白星スタート …イングランドの人々を熱狂させる21歳の「ガッザ2世」 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2021/06/18 17:00

“思い出の夏”から25年、EUROで白星スタート …イングランドの人々を熱狂させる21歳の「ガッザ2世」<Number Web> photograph by Getty Images

イングランド・サポーターの期待を一身に背負うフィル・フォデン。クロアチアとの初戦でも存在感を放った

 フォデンは「追加点か!」という場面にも絡んでいる。61分、ハリー・ケインがファーサイドでマウントのクロスに足を伸ばしたチャンスは、中盤の左インサイドにスペースを見つけてボールを要求し、受けながらのターンから前線に通したフォデンのパスが起点となっていた。

 71分、マーカス・ラッシュフォードとの交代でベンチに下がった。決定的な仕事をしたわけではないが、スタンドのイングランド・サポーターたちは拍手喝采を惜しまなかった。複数の国内紙で10点満点中7、8点の評価を得る国際大会デビューだった。

 試合後のウェンブリー。英国人にとっては灼熱レベルの陽射しを浴びながら、ある者は上半身裸になって、場内に流れる『スリー・ライオンズ』に合わせて「フットボールズ・カミング・ホ~ム」とファンが口ずさんでいる光景は、コロナ禍で目につく空席やマスク姿を除けば、あの夏、EURO1996当時を思わせた。

喜びに彩られた思い出の一戦を再現するチャンス

 6月18日の2戦目は、25年前と同じスコットランドが相手。相手にすれば忘れ去りたい記憶を葬りさるための雪辱戦でもある“英国ダービー”となるが、難敵クロアチア相手に「初戦で勝てない」というEUROのジンクスも打ち破ったイングランドにとっては、喜びに彩られた思い出の一戦を再現するチャンスでもある。

 クロアチアとの初戦で、守備重視の慎重策ではなく、積極的な“プランA”を採用した指揮官は、堅守ベースでしぶといスコットランドを攻め崩すことに力を注ぐことだろう。ピッチ上では、フォデンのような選手が天性の才能を披露する場面も増えるはずだ。

 念願のEURO初優勝まで、イングランドには複数のハードルがある。ブックメーカーには優勝候補筆頭とみなされても、チームとしての総合力はフランスやベルギーが上のように思える。イタリアが、開幕初日の完勝スタートによりダークホースから本命の仲間入りを果たしてもいる。

 国内では、ベスト4との見立てが有力だ。サウスゲイト体制下での代表復興は、2022年カタールW杯での完了が目標だからだろう。現在はまだ、1966年W杯以来となる国際大会優勝への助走期間である。だからこそ、“思い出の夏・25周年”のEURO2020は、未来の象徴にして喜びの体現者でもあるフォデンが輝く大会であって欲しい。

 それが、イングランド庶民が抱く純粋な一夏の願いだ。

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