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ブンデスリーガ“激動の監督人事”…4人の「スライド移籍」&7人の“ラングニック派”で来季の勢力図はどう変わる? 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2021/06/16 17:01

ブンデスリーガ“激動の監督人事”…4人の「スライド移籍」&7人の“ラングニック派”で来季の勢力図はどう変わる?<Number Web> photograph by Getty Images

ブンデスリーガでは監督の“スライド移籍”が活発に。バイエルンなど4チームが他チームから監督を引き抜いている

 ナーゲルスマン監督は、ミュンヘンの中心から約60キロ西にあるランツベルク・アム・レヒという街の出身で、幼少期からバイエルンのファンだったそうですが、自身は同じく近郊都市アウクスブルクのジュニアユースを経て1860ミュンヘンのU-17チームに在籍し、20歳の時に膝の負傷で現役生活を終えています。

 その後、ナーゲルスマン監督は幾つかのコーチ経験を経て、28歳のときにブンデスリーガ史上最年少監督としてホッフェンハイムの指揮官に就任。そして、昨シーズンからライプツィヒを率いていました。つまり、ナーゲルスマン監督は長く切望していたバイエルンとの結びつきをようやく果たしたわけです。

 4月29日にライプツィヒがマーシュ監督、5月19日にレバークーゼンがセオアネ監督の就任を発表しましたが、アイントラハトはなしのつぶて……。ラルフ・ラングニック(前ライプツィヒ監督)、ロガー・シュミット(現PSV監督)、ラウール・ゴンサレス(現レアル・マドリーB監督)などが次期監督候補として取り沙汰されていましたが、5月26日にようやくヴォルフスブルクを率いていたグラスナー監督の就任を明らかにしました。そして、“当事者”で最も遅く来季指揮官が決まったのは、そのヴォルフスブルク。6月2日にファンボメル監督の就任を発表しています。

 現役時代にオランダ代表としても活躍したファンボメル監督は、2019-20シーズン途中までPSVを率いて以来2シーズンぶりの現場復帰となります。

3シーズン連続でドイツ人監督が率いるクラブが欧州王者に

 このように、ドイツで指揮官の国内クラブ間移動が活発なのは何故なのか?

 その要因の1つとして、ヨーロッパ全体でドイツ人指揮官への評価が高まっている点が挙げられます。

 今季CLを制したのはトーマス・トゥヘル監督が率いるチェルシー(イングランド)で、昨季王者はフリック体制のバイエルン、一昨季はユルゲン・クロップ監督のリバプール(イングランド)と、実に3シーズン連続でドイツ人指揮官が率いるクラブがヨーロッパのクラブ王者に就いています。

 ただ、おそらくドイツで指揮を執る監督の素養で最も重要視されるのは言語の問題だと思われます。ドイツにおいてチーム単位で活動する際は、やはり母国語であるドイツ語が最も円滑にコミュニケートする手段になります。

 日本人ブンデスリーガーたちも、大半はドイツ語で指導を受けていて、中には英語でのコミュニケーションを禁止するクラブもあるほどです。

来季のブンデスで指揮する監督は全員がドイツ語を駆使

 2021-22シーズンのブンデスリーガ1部クラブ監督の国籍を整理すると、ドイツ9人、オーストリアとスイスとアメリカが各2人、そしてオランダとハンガリーとデンマークが各1人の計18人となっています。

【次ページ】 7人もの指揮官が、いわゆる“ラングニック派”

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