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安田記念でダノンキングリーを“復活”させた萩原師はダービー馬もよみがえらせていた 「皐月賞は仕事として失敗してしまった」 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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posted2021/06/11 06:00

安田記念でダノンキングリーを“復活”させた萩原師はダービー馬もよみがえらせていた 「皐月賞は仕事として失敗してしまった」<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

安田記念で圧倒的1番人気のグランアレグリアにわずかに先着したのが、8番人気のダノンキングリーだった

「皐月賞は仕事として失敗してしまった」

 しかし、驚いた事に結果は14着と大敗してしまう。敗因を問われた萩原調教師は、当時、次のように答えた。

「トモを中心に肩や首などに疲れが出てしまいました。体重の増減も激しいし、まだまだ出来上がった馬ではなかったという事だと思います」

 実際、デビュー戦で468キロだった体はその後、プラス26→プラス10→マイナス4と続き、この皐月賞も前走比マイナス10キロの490キロという数字を示していた。

「皐月賞は仕事として失敗してしまった」と語った指揮官は、中5週で臨む日本ダービー(GI)での巻き返しへ向け「大敗した原因を出来る限り早く突き詰める」作業から始めた。

 その結果、最初に手をつけたのは「体を戻す事」だった。

「皐月賞が終わって美浦に戻り、体重を計ったところ470キロ前後まで減っていました。このままではダービーを勝ち負けするどころか出走すらおぼつかない。そこでまずは体を戻す事に専念しました」

「正直、完調にはほど遠い感じを受けました」

 放牧先の山元トレセンとも密に連絡を取り、意思疎通をした。放牧中の3週間、調教師自身も毎週、宮城の牧場まで足を運んだ。その結果、帰厩した時には「皐月賞よりは良くなっていた」と言う。しかし。

「だからといって本当に良い時の状態に戻ったというわけではありませんでした」

 1週前追い切りで騎乗した横山典弘騎手も当時、唇を噛んで同調し、言った。

「正直、完調にはほど遠い感じを受けました」

 そんな中、明るい材料があった。心拍数を計測すると、皐月賞の時とは比べ物にならない良い数値を示したのだ。萩原調教師はこれを頼みの綱として、愛馬を次のステップへ進ませた。

「心拍数的には体が出来ているようだったので、あとは走る時の体の使い方を元に戻せる調教をしました」

【次ページ】 ダービーの2日前、前日に異例の調整

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