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表彰台で喜ばない20歳…Moto2で驚速の進化を続ける小椋藍に、GPライター遠藤智が誰よりも期待をかける理由とは 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2021/06/09 11:00

表彰台で喜ばない20歳…Moto2で驚速の進化を続ける小椋藍に、GPライター遠藤智が誰よりも期待をかける理由とは<Number Web> photograph by Satoshi Endo

前を行くアウグスト・フェルナンデスを追う小椋。カタルーニャGPではトップレベルのライダーと遜色ない走りを披露した

 初めて優勝争いのグループを視野に入れて戦った。優勝したレミー・ガードナーとの差は、転倒時点で3秒。すぐ目の前が表彰台争いのグループだった。この日の最大の目標は、「トップグループで戦うこと」。その目標達成まで、あとわずかだった。「早くトップグループで戦えるようになりたい」と開幕戦から語っていたが、その言葉をやっと実現した。しかし、最後まで戦えなかった。それが悔しかったのだ。

 小椋が一度抜いたアウグスト・フェルナンデスは、通算3勝を挙げている23歳のスペイン人ライダー。後ろには今季2勝を挙げているイギリス人でベテランのサム・ローズ。対して小椋のここまでの成績は、第2戦ドーハGPの5位がベストリザルト。ヨーロッパラウンドに入って同じようなポジションで戦っているが、トップグループとの差はなかなか縮まらなかった。

 優勝した選手との差はだいたい20秒。20周前後のレースが多いから、1ラップで1秒近く遅れてることになる。それがカタルーニャGPではほぼ同じラップタイムで周回を重ねた。文句なく今季イチバンのレースだったが、それを走り切れなかった悔しさが全身にあふれていた。

進化し続ける20歳

 小椋は東京都で生まれ、現在は埼玉県在住の20歳。所属するチームは「ホンダ・チーム・アジア」でシーズン中はバルセロナを拠点にしている。ホンダの育成ライダーとして、アジアタレントカップ、ルーキーズカップの登竜門に出場し優秀な成績を残した。その後、FIM・CEVレプソル国際選手権のMoto3クラスに出場し、19年にロードレース世界選手権のMoto3クラスに参戦する。

 2年目のシーズンとなった昨年はコロナ禍の中でシーズン15戦という変則スケジュールだったが、シーズン最多の7回の表彰台に立ち総合3位。優勝はなく、タイトルも獲得できなかったが、日本のレースファンの大きな期待と注目を集めた。今年はMoto2クラスにスイッチ。ルーキーながら、今季7戦のうち4戦でシングルフィニッシュを果たし、ここでも注目を集めている。

 小椋のイチバンの良さは、志の高さにある。一戦一戦が勝負であり、彼に「今年は勉強のシーズン」という言葉はない。結果的に学ぶことになるシーズンはあるが、常に優勝、表彰台を目指しているので、5位や6位では喜べない。常に自分の中に目標を置き、ひとつひとつそれを実現させていく。努力は惜しまない。トレーニングのすべては、そのためにあると言ってもいい。まだまだ成長過程にある彼は、そうすることで確実に前進していく。開幕前のウインターテストを終えたとき、小椋は「今年は4人のライダーが抜けている。その4人に大会毎に調子のいいライダーが加わることになる」と分析したが、その通りの戦いになっている。

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小椋藍
出光ホンダ

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