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笹生優花と畑岡奈紗の勝敗を分けたものは? 現地レポーターが見た直接対決「2人だけはラフからバーディを狙っていた」【全米女子オープン】

posted2021/06/08 11:03

 
笹生優花と畑岡奈紗の勝敗を分けたものは? 現地レポーターが見た直接対決「2人だけはラフからバーディを狙っていた」【全米女子オープン】<Number Web> photograph by Shizuka Minami

大会史上最年少で全米女子オープンを制した笹生優花。世界ランキングも40位から一気に上昇して9位となった

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南しずか

南しずかShizuka Minami

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Shizuka Minami

 笹生優花の優勝で幕を閉じた「全米女子オープンゴルフ」。大会史上最年少優勝(19歳351日)という偉業をレンズ越しに見届けたカメラマンと、試合の模様を近くで見守ったラウンドレポーターによる現地レポートをお届けする。

「SASO」と「HATAOKA」

 第76回全米女子オープンゴルフ最終日プレーオフ。リーダーボードには笹生優花(19歳)、畑岡奈紗(22歳)の2人の名前が堂々と表示されていた。昨年と違って有観客となった会場には、2人のショットに拍手と歓声が巻き起こり、時折に「Yuka!!!」や「Nasa!!!」と声援も飛んだ。

 初代世界アマチュアランク1位で、同大会を放映したWOWOWのラウンドレポーターを務めた片平光紀は、史上初のプレーオフ日本勢対決となった要因を“ラフからのマネージメント”に挙げた。

 全米女子オープンの戦いの舞台となったオリンピッククラブ・レイクコース(6457ヤード、パー71)は、名門難コースとして知られる。そこでもっとも選手たちを苦しめたのが“深いラフ”だった。

「ラフに入ったボールを近くで見ると、埋まっているというか。もう、どうやって出すんだろうと思うぐらいの深いラフで……」(片平)

 多くの選手は一度ラフにボールを置くと、まずはしっかりと脱出することだけを考える。ところが笹生と畑岡は違った。たとえボールがラフに入っても、積極果敢にバーディチャンスを作っていったのである。

パワーがあるから、攻めることができた

 それはスタッツにも表れていた。下記は、4日間通じた2人の「ドライバーの平均飛距離」、「フェアウェイキープ率」、「パーオン率」、「平均パット数」の数値とその順位である。

《笹生優花》
251.3ヤード/24位
59%/43位タイ
65%/8位タイ
28.25/8位タイ

《畑岡奈紗》
259.1ヤード/10位
57%/48位タイ
63%/19位タイ
28.00/6位タイ

 注目したいのはフェアウェイキープ率だ。2人とも約半分以上のホールでラフからのショットを強いられている。

「女子ゴルファーは男子ほど力がないため、下からボールをあげる打ち方(払いうち)をする選手が多いんです。払い打ちだと、フェアウェイに出すだけになりがちです。一方で、両選手はしっかりフェースのコントロールをして、ボールを上から打っていました。つまりパワーがあるから、ラフからでもグリーンを攻めていけたんです」(片平)

 プレーオフでもそれは顕著だった。1ホール目、ティショットを左サイドのラフに置いた畑岡は、プレッシャーがかかる2打目をピンまで約5mの位置につけた。笹生も3ホール目でラフから果敢にグリーンを攻めたことが、結果ウイニングパットに繋がっている。

 では、2人の勝敗の分かれ目は何だったのか。

【次ページ】 「手応え」を口にしていた畑岡

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