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井上尚弥との激闘から1年半 ドネアが明かす“敗因”「追い込んだ9ラウンドは、今でも考えることがあります」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2021/05/27 17:04

井上尚弥との激闘から1年半 ドネアが明かす“敗因”「追い込んだ9ラウンドは、今でも考えることがあります」<Number Web> photograph by Getty Images

2019年11月7日、ドネアはさいたまスーパーアリーナで行われたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ決勝で井上尚弥と対戦した

 昨年11月で38歳になりましたが、ここにきてスピードとパワーはさらに増したとすら思っています。この1年半の間、戦わなかったことで身体が回復したのが好影響を及ぼしているのでしょう。若い頃と比べてトレーニング方法には多少の変化はありますが、基本的にほとんど同じメニュー。今でもスパーリング中心の練習ですし、瞬発力を保つためのワークアウトを数多くこなしています。

 引退のことはまだまったく頭にありません。私はボクシングが大好き。このスポーツを続けられることにエキサイトしているんです。いつか、朝起きて、走るのも、ジムに行くのも嫌になるときがくるのかもしれません。そうなったときが引き際ですが、まだそんなふうにはまったく感じていません。

ウバーリ戦で「私の力量をもう一度示したい」

 この1年半、計画された試合が何度も延期になったことに対して、フラストレーションを感じてきたことは否定しません。

 昨年12月、ロドリゲス戦の前に新型コロナウイルスで陽性反応が出てしまったのですが、まったく症状はなかったし、その3日後の再検査では陰性でした。戦える状態だったのに、主催者側からの許可が下りなかったのは本当に残念。自分で受けにいった検査では陰性だったのに、安全を優先するというのが主催者側の結論だったのです。

 ただ、長い目で見れば、ここでのブランクはポジティブな出来事だったかもしれません。まず第一に、激戦の連続で痛みがあった身体を十分に休めることができました。それと同時に、子供たち、家族とゆっくりと一緒に過ごせたことも嬉しかったですね。そう考えると、ここでの時間は有意義なものでした。

 ウバーリ戦に向けて、今は素晴らしい状態です。体重調整も含めてすべてがうまくいっていますし、準備は完全に整ってきていますよ。もちろんウバーリも良い選手です。技術的にしっかりしており、WBC王者にふさわしい力量がある。サウスポーで、オーソドックススタンスの選手との戦い方を熟知している点も強みでしょう。今回の試合に向けて、彼の実力を過小評価するつもりはまったくありません。

 井上戦で来日した際、ウバーリは同じ興行のセミファイナルで井上の弟・拓真と戦ったので、日本でも顔を合わせました。2019年1月に彼がルーシー・ウォーレン(アメリカ)に勝って世界タイトルを取る前、実はラスベガス でスパーリングをしたこともあって、どんな戦い方をするかはわかっています。共通の友人もいるので、これまでは互いに助け合ってきました。

 ただ、我々はファイトビジネスの世界にいるので、今回は直接戦わなければいけない。このタイトル戦で、世界中のボクシングファンに私の力量をもう一度示したいと考えています。

今の目標は「バンタム級タイトルと、井上との再戦」

 今の目標は、まずウバーリに勝ってWBC世界バンタム級のタイトルを手に入れること。その後、井上との再戦を行うこと。そして、バンタム級の統一チャンピオンになりたいと思っています。バンタム級には他にもジョンリエル・カシメロ(フィリピン)、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)といった多くの強豪選手がいるのはわかっていますが、今はまず今回のタイトル戦とその先の井上戦に集中しています。

【次ページ】 井上vsダスマリナス「カシメロも来るんですか?」

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