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大谷翔平が「本塁打トップで先発投手」 ベーブルースに並ぶ“100年ぶりの快挙”を生んだ「3年前の決断」 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byKYODO/Getty Images

posted2021/04/28 17:05

大谷翔平が「本塁打トップで先発投手」 ベーブルースに並ぶ“100年ぶりの快挙”を生んだ「3年前の決断」<Number Web> photograph by KYODO/Getty Images

4月26日の試合に「2番・投手」で投打同時出場した大谷翔平。投げては今季初勝利、打っては2安打3得点の活躍を見せた

 6回のバント安打は大谷ならではと言えた。

 先頭で打席に入ると相手内野陣が極端に右側へ、かつ深く守備位置をとっているのを確認。韓国からやってきた新人左腕ヤンの初球を三塁前へ転がした。

「向こうの中継ぎ投手が素晴らしくて、こっちもリズムが掴めなかった。ああいうときは綺麗なヒットよりも、虚を突くようなヒットの方が効果的ではないかと思った」

 マドン監督は言った。

「彼は野球IQの高い選手だ」

 指揮官は大谷翔平の歴史的1日をこんな言葉で総括した。

「彼はバント安打を含めてあらゆることをした。今夜の試合を楽しめなかった人は、野球を見ても面白いとは思わないだろう。選手はみんな優れたメジャーリーガーだ。フィールドでは野手、投手のどちらかでプレーしている。その選手がオオタニの二刀流を見れば、それがどれほどに難しいことかをみんながわかっている。彼の『真価』は選手が一番わかっている」

 MVP3度の主砲マイク・トラウトは言った。

「He’s on the mountain.(彼は頂点にいるよ)」

 誰もが大谷が成し遂げた歴史的快挙に目を向け、賞賛した4月26日。だが、最も大きなことは、18年5月20日のレイズ戦以来となる白星を手にしたことだ。

 実に1072日ぶりの勝利。この間に大谷に起こった事実、苦境を乗り越えてきた精神力、更なる強化を求め磨いた体力と技術。そのすべてがこの1072日に凝縮されている。今後、更なる高みを目指していく大谷翔平にとって、この経験こそ、最高の財産となる。

「速球派なら、怪我するのは覚悟していた」

 18年6月。彼の右肘は腫れ上がっていた。トミー・ジョン手術の必要はないと診断され、このときはPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)を選択した。投球禁止期間を過ごし、肘の強化に努めた。9月2日のアストロズ戦で復帰したものの2回1/3で降板。チームドクターからはついにトミー・ジョン手術を勧められた。

 セカンドオピニオンでは「手術の必要なし」と診断したドクターもいた。それでも大谷は手術を選択した。

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