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昭和の大人気ボクサー“拳聖”ピストン堀口、鉄道事故死の謎「自殺説」「他殺説」?…深夜の東海道線で迎えた36年の最期 

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細田昌志

細田昌志Masashi Hosoda

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posted2021/04/25 11:02

昭和の大人気ボクサー“拳聖”ピストン堀口、鉄道事故死の謎「自殺説」「他殺説」?…深夜の東海道線で迎えた36年の最期<Number Web> photograph by AFLO

戦前~戦後の大スター拳闘家・ピストン堀口(堀口恒男)

《【平塚発】廿四日午前零時七分ごろ東京発湊町鳥羽行急行二〇一列車(中略)が茅ヶ崎市中島地先を進行中、同線路上を歩いていた男をはね飛ばして停車、直ちに平塚市花島病院に収容したが、胸部、両腕骨折、出血多量のため同一時十八分死亡した、平塚署で調べたところ男はかつて拳闘界で“ピストン堀口”として知られた(中略)帝国探偵社社員堀口恒男氏(三六)と判明した、平塚駅まで汽車を乗りすごし線路づたいに戻る途中の奇禍》(1950年10月24日付/読売新聞夕刊)

 往年の大スターの鉄道事故死とあって臆説が飛び交った。最も多かったのは自殺説だが、他殺説がなかったわけではない。この前年、国鉄総裁の下山定則が線路脇に轢死体で発見されている。この「下山事件」は自殺、他殺で警視庁内部でも意見が分かれている。今も結論は出ずじまいである。

「ピストン堀口事故死」も「下山事件」と同じ文脈で語られなかったわけではない。それでも、作家らしい突飛な推理で自殺説を否定したのは石原慎太郎である。評伝の著者である山崎光夫も、自身の推理と周囲の関係者の証言を踏まえ「自殺ではなく事故死」を主張する。

 アームチェア・ディテクティブを試みる限り、筆者も自殺説には懐疑的である。そもそも、生死を賭けて戦っていた男が、列車に自ら体当たりするだろうか。そんなことをするくらいなら、リング上で死を選んでいたのではないか。

 なぜならば、彼はピストン堀口だったからである。

 通算戦績は176戦138勝(82KO)24敗14分。「47連勝」と「82KO」は今も破られていない。

(【初めから読む】“4万円”チケットがダフ屋で“60万円”に…戦前の異常人気ボクサー、“拳聖”ピストン堀口とは何者だったのか? へ)

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